第44話 31階層
俺達は、30階層をサクサク攻略して行く。
そして、
「ここがフロアーボス部屋」
ナナミさんが、森の中に突然現れた部屋を指差す。
「なんか森の中に、ポツンと四角い部屋があるのって、変だよな……」
「まあ、コレがダンジョンだと思うしかないよ! 基本、どんな階層でも絶対にフロアーボス部屋があるのがダンジョンだから」
いつものように、口数が少ないナナミさんの代わりに、アマンダさんが補足してくれる。
「じゃあ、行く!」
ナナミさんが、一息付く暇もなく、フロアーボス部屋に入ってしまう。
「えっ?! もう行くの!」
ナナミさんが入ってしまったら、俺達も付いて行くしかない。
中に入ると、フロアーボスであるコカトリスが鎮座していた。
ナナミさんは、フロアーボス部屋に入るやいなや、杖じゃなくて、棍棒を床に突き刺し、石畳の床をカーペットのように捲り上げる。
サクラ姫の護衛を撒く時に見せた技だけど、石畳まで捲り上げるって、どんな仕組みなんだよ……
完全に油断してたコカトリスが、ひっくり返ってるし。
そして、そんなコカトリスにナナミさんはジャンプ一番飛び込み。
「エイヤー!」
と、コカトリスの鳥頭を、ズドン!と、棍棒で陥没させたのだった。
「一撃かよ」
「流石、金級上位と言われてるナナミさんね」
これには、俺もアマンダさんもビックリするしかない。
A級の魔物と言われてるコカトリスを、棍棒で一撃なんて。
あの子供のような華奢の体に、どんなパワーを秘めてるんだよって。
「余裕」
本当に、職業魔法使いなのか?
棍棒使いに変えた方が良い気が……
というか、俺達、全員前衛のような。
しかも、魔法使いを名乗ってるナナミさんが、一番前衛してしまってるし。
「ナナミー凄~い!」
なんか、サクラ姫がナナミさんの頭をヨシヨシしてるし。
確かに、ナナミさんは体は子供だが、中身は大人なのに。
だけれども、ナナミさんも頭をヨシヨシされて、満更でもない様子だし。
「31階層に行く」
相変わらず、ナナミさんはマイペース。
まあ、ナナミさんにとって30階層界隈は、いつも探索してる庭なようなものなのかもしれないけど。
フロアーボス部屋の階段を下りて、31階層に着くと、そこは、古い巨木が立ち並ぶ幻想的な世界が現れた。
「トトー! 凄いよ!」
「だな。結構、霧も深いし、良く見えないけど、巨木の下はでっかい池か湖か何かか?」
「ここの階層は、設置された吊り橋やツタを使って進むだけ。昔は、船を使って渡ってたけど、湖の中には強力な魔物がわんさかいて、とてもじゃないが進むのは困難」
ナナミさんが、珍しく饒舌に説明してくれる。
それだけ、湖に近付くのが危ないという事だろう。
「湖に落ちたら、ヤバいという事ね」
「そう」
アマンダさんの質問に、ナナミさんは短く答える。
てな訳で、俺達は誰が設置したが知らないが、吊り橋を渡って31階層を進む。
「この吊り橋、結構、しっかり作られてるんだな」
「うん。これだったら怖くないよ」
「本当に、こんな頑丈そうな吊り橋、誰が作ったんだろうね?」
俺とサクラ姫とアマンダさんが話してると、何故か先頭を歩いてたナナミさんがモジモジしだす。
もしかして、ナナミさんは、誰が作ったのか知ってるのかもしれない。
「あの?ナナミさん。もしかして、この吊り橋、誰が作ったのかって知ってますか?」
「うん。僕が作った」
ナナミさんは、顔を真っ赤にさせて答える。
「ナナミさん! 凄いじゃないですか!」
「元々、ボロボロの吊り橋があったんだけど、全て、僕が改修したんだ……冒険者ギルドに頼まれてね……」
なんか、ナナミさんは恥ずかしかったのか、物凄く照れている。
というか、ナナミさんって、もしかして物凄く器用なのか?よく考えたら、武蔵野国元三賢人が一人、坂田権蔵の孫だもんな。
「ナナミ! 凄い!」
サクラ姫が、ナナミの頭をヨシヨシすると、相当御満悦になっちゃったのか、心無しか、ナナミさんの足取りが軽やかになったような気がした。
もしかして、ナナミさんってツンデレ?
ツンというか、無口でマイペースなだけかもしれないけど。兎に角、褒められるのは大好きなようであった。
ーーー
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