第40話 一夫多妻
俺とサクラ姫は、学園長の家にニコルに会いに行った後、冒険者ギルドに向かった。
「やっと、王都の外に出れるぜ!」
俺は、意気揚揚と冒険者ギルドに行ったのだが、俺の冒険者パーティーメンバーのアマンダさんとナナミさんは、どこにもいなかった。
「ガッデム!」
そう、俺は、王様から王都の外でクエストを受けても良いと許可を貰ったのだが、それには補足があって、俺のパーティーメンバーである、王都でも有名な銀級冒険者の狂戦士アマンダさんと、金級上位のナナミさんと一緒じゃなければ、王都の外に出ては駄目と念を押されていたのである。
「何で、いつでも冒険者ギルドで待機してないんだよ!ていうか、奴らどこにいやがるんだ!」
「う~ん……他のクエストにお出掛けか、お家じゃないかな?」
サクラ姫が、最もな事を言う。
確かに、俺も、冒険者ギルドで待っててと約束して無かったし、そもそも、今日から王都の外でクエストできるかも分からなかったしな……
だけれども、俺の王都の外でクエスト受けたい気持ちは、最早、抑えきれないのである。
「取り敢えず、権蔵爺さんの店に行くぞ! もしかしたら、ナナミさんも権蔵爺さんと一緒に住んでるかもしれないし!」
「だね!」
てな訳で、王都の中でも貧民街のガラが悪い地域にある権蔵爺さんの店に行ったのだが、そこにはナナミさんじゃなくて、何故か、アマンダさんが居たのであった。
「あれ? 何でトト君がここに来たの? そんなに私に会いたいかった? もしかして、私をストーキングしてる?」
アマンダさんは、とても嬉しそうに話し掛けてくる。ストーキングされるのが、何故嬉しいのは疑問だけど。
「確かに、物凄くアマンダさんに会いたかったけど、こっちこそ、何で権蔵爺さんの店にアマンダさんが居るんだ!?」
俺は、ビックリし過ぎて、逆に質問する。
だって、ナナミさんを探しに来たのに、逆にアマンダさんを釣り上げてしまったのだ。
「私に会いたかったって……照れるなぁ……。トト君は、私に会いたくて王都中を探し回ってくれてたのね!」
「ですね」
俺は、話を合わせる。流石に、違う女の子が目当てでここに来たのに、アマンダさんをたまたま見つけたと言えないし。
「ご察しの通り、ここに居た理由なんだけど、新しいビキニアーマーを新調する打ち合わせよ!
トト君も、どこかの防具屋に私が居ると思って、王都中の防具屋を駆けずり回ったんだもんね!」
「で……ですね」
流石に、アマンダさんがビキニアーマーを新調する防具屋が権蔵爺さんの店だとは思わないし。というか、権蔵爺さんの店って、剣や刀以外にビキニアーマーまで作るのかよ。
とか、思ってると、
「おっ? なんじゃ?」
権蔵爺さんが、店の奥から出てきた。
「お久しぶりです! 十一文字権蔵、有難く使わせてもらってます!」
「おお! そうかそうか! そいつは良かった!儂が打った刀も喜んどるじゃろ!」
権蔵爺さんは、ご満悦。
本当に、自分が打った刀を、自分が認めた相手に使って貰えるのが嬉しいのであろう。
「あの~それから……」
俺は、話を変えてナナミさんの事を聞こうとすると、
「アッ。君は」
ナナミさんも、続けざまに店の奥から現れて、俺の存在に気づく。
「ナナミさん! 探してましたよ! これからクエストを受けようと思ってたのですが、一緒にどうですか?」
「お爺、僕のフィアンセが家に挨拶に来てくれた」
俺はただ、クエストに誘いに来ただけなのに……何で、フィアンセで、俺が挨拶?
「ど!どういう事じゃ!」
ナナミさんの言葉に、権蔵爺さんは、ぶったまげている。
俺の方が、ぶったまげてるんだけど。
「ふふ~ん。凄い男を見つけてきたでしょ!」
何故か、ナナミさんは鼻高々。
「ナナミよ! こやつと婚約したじゃと! でかした!」
何故、こうなる。
権蔵爺さんって、自分が認めた人間に対しは、どこまでも甘いのか……
まあ、初めて会った俺に、5000万マールもする刀を、ポン!とくれるぐらいの太っ腹ジジイだし。
「フン! 僕の目は、お爺同様に確かだからね!僕が認めた相手だから、必ず大物になるのだよ!」
何故か、ナナミさんは胸を張る。
「流石は、我が孫じゃ! コヤツのポテンシャルを見破るとは!」
なんか、手放しに褒められて嬉しくなってくる。褒められて嬉しくならない奴なんていないし。
「ちょっと、一体、どういう事! トト君は、私の旦那になる予定なんだけど!」
昨日のナナミさんとのやり取りを、全く知らないアマンダさんが話に乱入してくる。
「僕、『銀のカスタネット』に入団したから、宜しく!」
ナナミさん、もの凄く言葉足らず過ぎる。
「ちょっと! 本当に、どういう事かな? トト君?!」
まあ、そうなるよね。てか、俺もよくわかんないんだけど。俺と結婚するとか、ナナミさんが勝手に言ってるだけだし。
まあ、アマンダさんもそうなんだけど。取り敢えず、誤解を解く為に説明してみる。
「ええと。ナナミさんが言ったように、ナナミさんも『銀のカスタネット』に入ったから、それから婚約の件は、ナナミさんが勝手に言ってるだけで、ほぼ、アマンダさんと同じ感じで言ってるだけだから」
「なるほど。そういう事ね!」
アマンダさんは、簡単に納得した。
「エッ?!何で、それで納得できるの!」
俺は、思わずツッコミを入れてしまう。
まあ、アマンダさんも、自分が押しかけ女房みたいに、勝手に俺に言い寄ってる自覚はあるようだ。
そして、何故か一番歳下で、人生経験が少ないサクラ姫が補足する。
「トトのような良い男には、女の子がほっとかないだけだよ!
特に、私や、アマンダさんや、ナナミさんのような良い女の子はね!」
「そういう事!」
「ウン。僕もその意見に同意」
王族で、一夫多妻制も普通と思ってるサクラ姫が、何故か、自分こそが第一夫人だという貫禄を見せつけて、全てを纏めちゃったのであった。
まだ、8歳の女の子なのにね。
ーーー
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