第32話 アマンダさんの事情

 

 狂戦士アマンダこと、現在、王都冒険者ギルドで銀級冒険者として活躍してるアマンダは、王都近郊にある街の、まあまあの商家の長女として生まれた。


 家族構成は、父、母、そして弟の4人家族。


 でもって、今の性格でも分かる通り、小さな頃から活発で、男の子に交じってチャンバラや、木登り、取っ組み合いの喧嘩まで、まあ、女の子とは思えないヤンチャ過ぎる少女時代を過していたのだった。


 そんなアマンダに転機が訪れたのは、13歳の時、教会で女神様から、疲れたり、興奮したり、HPが減ったりすると、力を増すスキルを授かったのだ。


 それからというもの、アマンダは、男子と喧嘩しても必ず勝利。しかも、手加減が分からなくなって半殺しに。

 これはヤバイと思い、それから女の子らしく生きる事を決意。


 喧嘩しなかったら、男の子を半殺しにしないから。


 そして、女の子らしくなったアマンダは、とても男子にモテるようになる。

 まあ、元々、可愛らしく明るいアマンダには、男子にモテるポテンシャルがあったのだ。


 可愛い女の子として生きていれば、好きな男の子もでき、晴れてアマンダは、その男の子と付き合う流れとなる。


 だけれども分かるよね。


 アマンダは、疲れたり、興奮したり、HPが減ったりすると、力を増すスキルを持ってるのだ。


 初めて、付き合った彼氏と手を繋いだ時、事件は起こってしまったのだ。

 手を繋いだアマンダは、ドキドキ興奮してしまって、男の子の手を、ボキボキボキ!と、握り潰してしまったのである。


「あぁ……そんな……」


 そしてアマンダは悟るのだ、自分は恋をする事が出来ない人間だと。


 それでも生きていれば、好きな人が出来てしまう。


 アマンダはとてもモテるもんだから、何度も懲りずに、何人か好きになった人と付き合ったのだが、その度に半殺しにしてしまった。


 しかも、悪い事に、アマンダは男子が大好きなのだ。

 小さい時から、男の子とばかり遊んでたのも男好きだから。


 そんなアマンダは、男子と付き合う事を諦めきれない。


 なので、屈強な冒険者なら、アマンダのパワーに耐えられる男が居るかもと思い冒険者になったのだが、アマンダは1つ大きな間違いをしていたのだ。


 確かに屈強な冒険者の中には、アマンダと手を繋いでも耐えれる猛者は出現した。


 だけれども、いざ、付き合って、男女の付き合いが深くなり、ベッドを共にすると……


 まあ、分かるよね。


 男女の営みって、ハアハア腰振って、徐々に疲れていき、そしてとても興奮しちゃうのだ。

 そして、アマンダが最高潮の興奮MAXに達すると、どんな屈強な男でさえ、アマンダの有り得ん力により、全身粉砕骨折にされて、再起不能になってしまうのであった。


 だけれども、本来、男好きで、年頃の女性になりエロい事に興味が尽きなくなったアマンダは、男子と付き合うのを諦めきれなかった。


 なので、色んな努力をするようになったのだ。


 まあ、努力すると言っても、スキルはどうする事も出来ない。


 まず、変な噂が立たないように。誰にでも優しくする事にした。

 既に、冒険者ギルドで囁かれるようになってた、どんな屈強な男でも再起不能にしてしまうという噂を払拭する為に。


 それから、エロ可愛いビキニアーマーを装備する事にした。


 これには2つの意味があり、1つは、エロい格好をしてれば、興奮すると恐ろしい女になると分かってても、男は鼻の下を伸ばしてやってくる効果。

 そして、もう1つの効果は、アマンダは興奮しちゃうと狂戦士化して、服をビリビリに破いて、毎回、駄目にしてしまう。

 それなら、最初から服を破かないように着なければいいんじゃんと考えて、鉄製のビキニアーマーだけを装着する事にしたのだ。


 ビキニアーマーって、じつを言うと物凄く丈夫で、身を守るだけでなく、貞操を守る観点からも作られていて、屈強な男の子が犯そうと襲ってきてもビクともしない強度を誇っていたのである。


 まあ、ここまで来ると、再び、男の方から鼻の下を伸ばして、アマンダの元にやってくるようになる。


 誰しも、ビキニアーマーのエロ可愛い女の子が優しくしてくれたら、惚れちゃうもんね。


 だけれども、これだけでは駄目なのだ。

 再び、男にモテるようになっても、肝心の男と付き合う事が出来ないでいたのだ。


 だって、興奮するとぺっちゃんこにしちゃうから。


 なので、次は、色々な方法を人から聞いたり、新しい方法を模索するようになる。


 座禅をすれば、精神が落ち着いて興奮しなくなると聞けば、座禅をし、

 写本をすれば、精神が落ち着くと聞けば、写本をしてみたりしたが、全ては無駄だった。


 ベッドで好きな人とハッスルすると、興奮して必ず理性が吹き飛んでしまうのだ。


 そして、たまたま王都のカフェで小耳に挟んだ、よく当たる手相占い師の話に、藁をも掴むつもりで飛び付いたのだ。


 なんでも、手が荒れる悩みを聞いただけで、手荒れを治してしまったり、顔のニキビが気になると悩みをうちあけたら、ニキビが治ったりと、もう、手相と関係ない奇跡を連発してる新進気鋭の手相占い師が、カスタネット準男爵領の街に現れたという噂を。


 そして、早速、そんな占い師に、悩みを打ち明け、自分の悩みを解決してもらおうと、カスタネット準男爵領に行こうと思った矢先に、その新進気鋭の占い師が、王都の自由市場に現れたと聞いたのだ。


 早速、会いに言って、悩みを聞いて貰おうとしたら、その日は、残念な事に、手相占いではなく腕相撲をしていたのである。


 しょうがないので暫く様子を見て、今日は出直そうかと思ってたのだけど、

『アレ?ちょっと待って?!あの占い師、どんだけ腕相撲をしているの?』

 と、気付いてしまったのだ。


 その日は、ずっと、その占い師を観察してたのだが、1日1000回以上、ヘッチャラな顔をして腕相撲を続けたのである。

 まあ、本人は勝ったり、負けたり疲れた演技をしているものの、どう考えても疲れているようには見えない。


 そもそも、王都で有名な力自慢の冒険者と熱戦を繰りひろげてた時など、普通の者なら瞬殺で負けてしまう筈なのに、わざわざ熱戦してみせて、わざと負けたりしてるのだ。

 しかも、そんな試合をした後なら、普通、腕が疲れて、直ぐに次の試合など出来ない筈なのに、ケロッとした顔して、すぐに腕相撲の試合をしてるのだ。


『もしかして、あの手相占い師、トンデモない力持ち?

 あの力なら、バーサーカー化した私を抑えつけてくれるんじゃないの?!』


 そして、そんなトンデモなさ過ぎる手相占い師を目撃してしまったアマンダが、希望の光りを見つけたと思ってしまったのは、仕方が無い事だったのだ。

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