第30話 おねしょ

 

「トト! 大変! アマンダがオネショ!」


 なんか知らんが、サクラ姫が、俺以上に慌ててしまってる。

 多分、つい最近まで、サクラ姫もオネショしていたのかもしれない。


 そして、そのせいなのか、姉であるクレア姫と同じような、変な正義感が発動してしまったのだ。


 この場合は、アマンダがオネショした事を隠蔽してあげようと、動き出してしまったのである。


「トト! 私、ギルドの受付に行って、タオル貰ってくるから、トトは、その間にアマンダのパンツを脱がせてあげていて!」


「何ぃー!!」


 サクラ姫は、俺が叫んでるのも無視して、そのまま走って行ってしまった。


「俺が、アマンダさんのパンツを脱がせるの?というか、ビキニアーマーを?」


 そんなの無理に決まってる。俺、つい最近まで、ずっと家の庭掘りばかりしてたのだ。

 人とたくさん接するようになったのも、『握手』スキルを得てからの、つい最近。


 確かに、手相占いするようになって、人とはお話するようになったが、あくまで商売での話であって、友達とか、ましてや、女の友達となんかと喋った事ない。


 というか、俺って友達自体が居なかった……


 だって、しょうがないじゃん。家から出た事無かったし、ましてや、庭で井戸掘りしかさせて貰えなかったんだから。

『握手』スキルを得た初期の頃なんて、人と接し無さ過ぎて、家で働いてる女性の使用人と握手するのも、恐ろしくて避けたんだから。


 俺が家にいて喋るのは、二男のニコルや妹のリーナ。それから男性の限られた使用人だけだったんだから。


 でもって、流石に手相占いするようになって、女性とも話せるようになって、そして、ついに女の人のパンツを脱がすのか……


 て、やっぱりおかしい。

 なんか、すっ飛ばし過ぎ!

 パンツ脱がすのは、女の子の友達作って……彼女作って……それから、結婚してからだし!


 結婚したら、裸になって、お布団の中で抱き合って子供を作るのだ。


 それなのに、アマンダさんと結婚もしてないのに、すっ飛ばしてパンツを脱がせても良いものなのか?


 だが、待てよ……


 俺って、アマンダさんに酷い事してしまって、オシッコを漏らさせてしまったのだ。


 大人の女性が人前でオシッコ漏らしちゃうなんて、とんでもなく恥ずかしい事なのだ。

 俺だったら、生きていけないくらい恥ずかしい。


 実際、俺は、アマンダさんの前でオシッコを漏らして逃げ出してしまった過去がある。


 何とか、腹痛だったと誤魔化したが、それが上手く行ってなかったら、俺はどうしたのだ……


 詰んだ。俺は、既に詰んでいたのだ。


 自分が、オシッコ漏らしただけでも、死ぬほど恥ずかしかったのに、ましてやアマンダさんの場合は、完全に俺とサクラ姫に見られてしまってる。


 子供の俺や、サクラ姫が、オシッコ漏らしちゃうのは、まだいい。


 アマンダさんは、大人の女性。

 それも、王都冒険者ギルドのヒエラルキーでいうと、上の方に居るイケてる女性なのである。


 そんな女性が、歳下の冒険者に負けて、ましてや、オシッコを漏らしてしまったと冒険者ギルドで広まってしまったら……


 答えは1つ。


 俺は、つい最近、その症例に近い人物を、この目で見た。


 というか、原因は、やっぱり俺だった。


 俺と同じ銅級冒険者にして、銅級持ちでは初の二つ名持ち。その名も、『脱糞のモブルート』!


 なんか、二つ名の響きだけはいいが、既に、ギルドに所属してる子供達にさえ、指を差されて笑われてるし。


 このままで、アマンダさんも、『オシッコチビりのアマンダ』と、二つ名が付いてしまって、子供達に指を差されて笑われてしまう。


 元々、『狂戦士アマンダ』という格好良い二つ名が付いてたのに、『オシッコチビりのアマンダ』に、二つ名が変わってしまうなんて……


 やはりこれは、アマンダさんが、オシッコをチビったという事実を抹消するしか、手が無いのかもしれない。というか、もうそれしかない!


 俺は、本当にこの時、テンパリ過ぎて、周りが全く見えなく、訳が分かんない状態になってしまってたのだ。


 完全に、これは、お子様のサクラ姫の言葉を真に受けて、ミスリードしてしまったと気付かずに……


 そして、そんなテンパリ過ぎてた俺は、ついに禁断の、女の子のパンツを野外(屋上訓練所だから野外)で脱がしてしまうという愚行を行ってしまったのである。


 女子のパンツを野外に脱がすと、一体、どのような自体に発展するかも気付かずに。


 ーーー


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