第28話 興奮すると強くなるスキル

 

「じゃあ、自己紹介も終わったから、そろそろ銀級昇格試験を始めましょうか!」


 狂戦士アマンダが、仕切り直して、銀級冒険者試験を始めるようだ。


「と、その前に忠告しておくわ! 私、疲れたり、興奮したり、HPが減ったりすると、力を増すスキルを持ってるの。なので、私を疲れされて勝とうとする長期戦に持ち込もうとする作戦だけは、止めておいた方が良いわよ!」


 アマンダさんが、俺に忠告してくる。


「あの?それは、ダメージを受ければ受ける程、強くなるという事ですか?」


「そうよ。私って死にかけると、とんでもなく強くなっちゃうの。それこそ、金級冒険者並にね!

 そしてそれと同時に、理性まで吹っ飛んじゃって、敵味方関係無く攻撃して暴れまくっちゃうのよね……

 それが、私が狂戦士と呼ばれてる所以よ」


 なるほど、何故、アマンダさんが狂戦士とかいう特殊な職業についてるか解った。全ては、アマンダさんが持つスキルが影響してたようである。

 なので、アマンダさんと勝負する場合、一発で殺してしまうしか方法が無いという事か……


 ていうか、殺さないと勝てないのかよ?!


 俺、もしかして詰んだ?アマンダさんを殺す訳にはいかないし、だからといって、瀕死の状態にしたら、手に負えないほど逆に強くなっちゃうんだよな?


「それじゃあ、始めるわよ!」


「えっ! ちょっと、待って!」


 考える間もなく、アマンダさんが剣を抜いて襲いかかって来る。仕方が無いので、俺も剣を抜く。


 攻撃して、ダメージ与えちゃうと強くなっちゃうので、俺は、受けに徹するしかない。

 それにしても、アマンダさん、強い。

 一発一発が重いし、手数も多い。


 そして、そんな一発が重くて手数が多いアマンダさんの攻撃でも、俺は、難無く受け流せちゃうのだけどね!


 やはり、俺の『握手』スキルの派生スキル、剣を握れば剣豪になるスキルはハンパない。


「トト君! 私にダメージを与えなければ大丈夫だと思ってるかもしれないけど、私って、疲れてきても強くなっちゃうのよね!」


 とか、アマンダさんが言う傍から、斬撃のパワーが増してきて、その斬撃のスピードも増してくる。


「アハハハハハ! 楽しい! 楽しいよ!トト君!」


 なんか、アマンダさんは、興奮してきてるのか、益々、スピードが速く、一発一発がまさに致命傷になりそうな程の威力になってきていたりする。


 それでも、俺は、軽くいなせちゃうんだけど。


「あぁぁぁああぁぁーー!いい!凄くいい!私をこんなに楽しましてくれるなんて!」


 アマンダさんは、興奮の為か体から蒸気を発し、ビキニアーマーのせいで露出してた肌も真っ赤に紅潮していて、なんかとんでもなく、とてもエロい感じになってしまってる。


 こうなると、俺の方も興奮して来ちゃって、三本目の刀がそそり立ってきて、思わず、三刀流で闘うハメになりそうになってしまい、どうするか悩んだ挙句、俺は、刀を鞘にしまい、そして、アマンダさんの両腕を、両手で握った。

 もう、そうでもしないと、誤って、アマンダさんを斬り裂いてしまいそうだったから。


 俺も男の子なのだ。興奮してハアハアしちゃうと、手元だって狂ってしまうかもしれないし、それなら、手元が狂わないように、直接腕を掴んでしまえば良いと考えたのである。


「ああ! やっぱいい! 私が思ってた通り!トト君!アナタ最高よ!」


 最高と言われても、俺にいわせたら、アマンダさんの方が最高にエロいとしか言えないのだけど。


 だって、ハアハア言いながら、どう考えても俺に襲いかかろうとしてるし。これがもしかして狂戦士と言われる所以。

 だとしたら、エロ恐ろし過ぎる。


 アマンダさんは、興奮と共にドンドン力を増してくるのだが、そこは、俺の『握手』スキル。例え、どんな相手であっても、俺が一度掴んでしまったら、どんなものでも必ず抑えつける事が出来るのだ。


 俺の『握手』スキルは、既にとんでもない事になっており、何かを掴んでいたら、全く疲れないし、どんな物でも掴めば握りつぶせる等々。

 最早、俺が掴んだら勝ち決定のスキルなのである。


「ああ! やっぱり!元々、カスタネット領でのアナタの噂を聞いて、私の特異体質の悩みを聞いて貰おうと思ってたのだけど、そのトト君が、突然、王都に現れて、腕相撲をしてたのを見て、ピン!と気付いたのよ!

 アナタなら、私を制御できるのかもしれないと!

 アナタは何人もの屈強な者達と、何千回も腕相撲してもヘッチャラな顔をしてたわ!

 そして、そんなアナタなら、狂戦士化した私を止める事ができるかも?受け止めてくれるかも?って、思ってたの!

 そして、トト君は、実際、私を受け止めてみせた!

 トト君!アナタ最高よ!私のパートナーになりなさい!」


 ちょっと、アマンダさんが何言ってるのか分かんない。


 だけど、俺自身がとても嬉しいと感じてる事は解る。

 だって、鞘に収めた筈の三本目の刀が再び反り返り、ビクビクしながらパンツを濡らしていたから。


 どうやら、俺の三本目の刀って、興奮するとオシッコ漏らしちゃうみたい。


 多分、犬が喜ぶと嬉ションしてしまうみたいに、俺もどうやら興奮するとオシッコを漏らしてしまう体質なのだという事が、今日、やっと解ったのであった。


 ーーー


 トトの勘違いは、まだまだ続く。

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