第3章〜動物農場〜⑪
11月10日(月)
週が明けて、生徒会選挙の投票結果のもと、
生徒会長就任の所信表明演説で、
「第105代目の生徒会長に選ばれました石塚雲照です。今回の生徒会選挙は、SNSを通じて、一般生徒のチカラが示された選挙だと思っています。これまで、声を上げられなかったクラブ連盟に所属していない生徒たちの声が、ひとつに石塚雲照を生徒会のステージに立たせてくれたと思っています。このチカラを一宮高校の既得権益を打破していくチカラに変えると同時に、SNSの行き過ぎた言動にも目を配って行きたいと思います」
新しい生徒会長の演説の趣旨は、このようにまとめられる(数分間におよぶスピーチを録音し、音声認識サービスで読み込ませた内容をChatGPTに要約してもらった結果だ)。
同時に、今年度の生徒会役員のメンバーも発表された。
一宮高校の生徒会役員は、生徒会長の指名で決まるため、今期の役員メンバーは、男女バスケットボール部の部員が多くを占めている。
そんな中でも、異例の抜擢を受けた生徒がいた。
それが、僕のクラスメートでもあるmichiこと、
彼女は、学外でのインフルエンサー的活動が見込まれて、新しい生徒会のインターネット・SNSイジメ対策委員および選挙管理委員に任命されている。
「michiさん、どうして……」
石塚雲照の生徒会長就任に、いまだ納得がいっていないのか、ミコちゃんは、自分が推している歌い手の委員就任についても、複雑な想いを抱いているようだった。
「このたび、新生徒会のインターネット・SNSイジメ対策委員と選挙管理委員に任命された
委員就任のスピーチでこう語った
「石塚さんは、選挙期間中に十条委員会や光石さんへのデマを完全にスルーしていたのに、なにを今さらって感じですよね……光石さんも、michiさんにSNS担当を任せていたら、こんなことにならなかったかも知れないのに……」
「まあまあ、それをいま言っても仕方ないことだから……それより、michiさんの経験を活かしたSNS対策に期待しよう」
つぶやくように語るミコちゃんの言葉を受けて、ケイコ先輩は下級生の女子をそう諭す。
このあと、新生徒会の所信表明の取材を終えた僕たちは、放送室に戻って、翌日以降の一宮新聞の紙面作りに関する会議を行う。
「佐々木くん、一般生徒の生徒会選挙に対する意見を聞き取る企画は、上手くいったの?」
「はい! ミコちゃんと一緒に朝の登校時と昼休みに三十人近い生徒にインタビューを受けてもらうことが出来ました。土曜日に話しを聞かせてくれたクラスメートの
ケイコ先輩の言葉に苦笑しながら返答し、インタビュワーのミコちゃんと取材に答えてくれた生徒の映像を再生させる(トシオが不在だったので、今回は僕が撮影役をこなしていた)。
「ホントに色んな情報があふれていて……なにが、本当のことか、全然わからなかった……」
これは、朝の登校時間に校門の近くで僕たちの直撃インタビューで回答してくれた女子生徒の言葉だけど、彼女が語ってくれたことは、全校生徒の多くの声を代弁してくれているんじゃないかと思う。
やはり、土曜日に塩谷が僕に語ったことは、彼だけでなく、多くの生徒が感じていたことでもあるようだ。
一方、石塚候補に投票したという生徒たちのインタビュー映像もありのままに再生する。
――――――石塚候補を応援したキッカケは?
「SNSやYourTubeで気づくことがあった」
――――――生徒会選挙の投票には、どんなメディアを参考にしましたか?
「放送・新聞部の報道は、正直、見ていない」
――――――SNSとか?
「ティックタックとかですね」
――――――SNSの情報は、どの程度信用していますか?
「僕は100%信じていますね」
――――――放送・新聞部の報道の問題点は?
「新聞部の紙面は、一方通行で発信して終わり。ネットは、みんなのコメントが入ってやり取りがあるのが良いところ」
――――――今回の選挙では、どの候補に投票しましたか?
「そりゃ、石塚さん! 降谷さんの話しは信憑性があると思うよ。エビデンスも全部あると言ってるし」
――――――そのエビデンス自体は確認されましたか?
「エビデンスがあろうがなかろうが、自分はトータルで見たときに石塚さんが良いと判断した」
――――――放送・新聞部の選挙前と選挙期間中の報道内容について聞かせてください。
「ヒトを引きずり降ろすためのメディアなのかなって言う感覚になりますね。一宮新聞とか公式チャンネルとかは、ほとんど見なくなったし……YourTubeの方が自分で判断すればね、しっかりした正確なことも言ってるから」
放送・新聞部の一員としては、正直なところ胃が痛くなるような回答もあった。それでも、この街頭インタビューのような取材が成功したのは、インタビュワーを務めたミコちゃんが、生徒たちから発せられる放送・新聞部に対する苦言に対して、イヤな顔をせず、最後まで冷静に仕事を果たしてくれたおかげだ。
ただ、これらのインタビュー映像を確認したケイコ先輩も、生徒たちのナマの声には、さすがに苦笑するしか無かったようだ。
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