第1章〜彼を知り、己を知れば、百戦して殆うからず〜④
「あれ? 投稿フォームになにか届いてますよ?」
僕らが、その投稿に気づいたのは、ミコちゃんの何気ない一言がキッカケだった。
「投稿フォームからの要望なんて珍しいな? もう、半年ぶりくらいか?」
つぶやくように言ったミコちゃんの言葉に、トシオが反応する。
放送・新聞部では、取材してほしい内容や記事にしてほしい事柄を公式ホームページに設置したGoogleフォームのアンケートで受け付けている。ただ、トシオが言うように、フォームからの要望は、春先にクラブ紹介の動画や新聞記事の作成依頼が寄せられる程度で、普段は開店休業の状態になっていた。
「タイトルは……えっ!? 『バスケットボール部の部内イジメと凱旋パレードに関わる不正会計について』――――――これ、なんだか、穏やかじゃない内容ですよ!」
ミコちゃんの一言に、部室に集まっていた僕、トシオ、ケイコ先輩の残りの三人も、一斉にノートPCの画面の前に集合する。
クラブ活動に関する問題の内部通報と言っても良い内容を告発する文書は、こんな風に記されていた。
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男子バスケットボール部・部長
1.部内イジメについて
部長の部内イジメは部員の限界を超え、あちこちから悲鳴が聞こえきます。 練習場、遠征先に関係なく、自分の気に入らないことがあれば同級生や下級生を怒鳴りつける。例えば、遠征先の宿舎で、チェックイン時間の手違いがあれば、宿舎に予約をした部員を怒鳴り散らし、その後は 一言も口を利かなかったという。自分が知らないことが放送・新聞部でで取り上げられ評判になったら、「聞いていない」と担当の部員を呼びつけて、執拗に責めたてる。部内会議の際に、気に入らないことがあると机を叩いて激怒するなど、数に限りがない。
また、クラブの幹部に対するチャットによる夜中、休日など時間おかまいなしの指示が矢のようにやってくる。日頃から気に入らない部員の場合、対応が遅れると「やる気がないのか」と非難され、一方では、すぐにレスすると「こんなことで僕の貴重な休み時問を邪魔するのか」と文句を言う。クラブの試合でも生意気だとか気に入らないというだけでメンバーから外された部員が大勢いる。これから、ますます心を病む部員が出てくると思われる。
2.凱旋パレードについて
7月20日実施のバスケットボール部インターハイ出場決定の凱旋パレードは部費や校費をかけないという方針の下で実施することとなり、必要経費についてクラウドファンディングや地元の企業からの寄附を募ったが、結果は必要額を大きく下回った。
そこで、クラブへの出入り業者への大量発注を約束して、寄付を募りることで補った。幹事社は市内のPR会社。部内の司令塔は、
3.業者からの数々の贈答品
石塚部長のたかり体質は部内でも有名。部長の元には業者からの贈り物が山のように積まれている。
事例1)
7月1日、バスケットボールメーカーのA社が訪問したときのこと。周囲に部員がいたため、A社の営業社員から贈呈されたバスケットシューズをその場では、「こんな品物は頂けません」と辞退。だが、これまで汗で滑りにくかった練習用のボールが、低価格で滑りやすいA社のボールに変わってしまい、部員の不満がたまっている。
一方、営業社員を取り次いだ部員に向かって「みんなが見ている場所で受け取れるはずないだろ。ちゃんとオレの自宅に送るように言っておけ!」と指示。後日、無事にバスケットシューズをゲットしている。
事例2)
7月に、B社への新ユニフォームを発注した。そして、SNSのバスケ部公式アカウントで、新ユニフォーム着用のキャンペーンを展開している。このB社からは、一着あたり数万円以上するNBAチーム有名選手のレプリカユニフォームを何着も受け取っている。特定の企業のユニフォームの宣伝活動は、企業にとっては絶好のPRとなり、その見返りとしてのレプリカユニフォームの贈呈となると完全な贈収賄である。
事例3)
2.凱旋パレードについてでも触れた、夏休み期間中の男女バスケ部の合同凱旋パレードは、市内のPR会社が取り仕切って行われた。凱旋パレードの企画・運営から広報活動に至るまで、この会社が
とにかく、もらい物は全て独り占め。特産品の農産物や食品関係も全て。あまりの強欲、周囲への気配りのなさに、親しい部員ですら呆れているという噂。もちろん、・遠征先での飲食は原則ゴチのタカリ体質、お土産必須。遠征試合が大好きな理由はこれ。ゲーム実戦主義が聞いて呆れる。
上記、3点の不正について、放送・新聞部による調査と報道をお願いしたい。
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