第15話 未来を紡ぐ子どもたちへ
活動がさらに広がり、彼女の名前は福祉や教育の現場で知られるようになった。地域での講演、学校や施設でのワークショップ、そして支援プログラムの立ち上げ——彼女の仕事は多岐にわたったが、その中でも特に心に残る出来事があった。
ある日、彼女は一人の女の子と出会った。その子は小学6年生で、彼女と同じようにチック症を抱えていた。学校でのいじめが原因で不登校となり、家でも心を閉ざしてしまっていたという。
初めて会ったとき、その子はうつむいたまま、彼女の顔を一度も見ようとしなかった。母親が申し訳なさそうに事情を説明する中、彼女は女の子の隣に静かに座り、こう話しかけた。
「私も、昔は同じだったよ。」
その言葉に、女の子は一瞬だけ彼女を見た。彼女は自分が子どもの頃に感じていた孤独や不安、そしてどのようにそれを乗り越えてきたかをゆっくりと話し始めた。
「周りが何を言っても、あなたにはあなたの価値があるよ。そのままで、ちゃんと大切な存在なんだ。」
その言葉に女の子は涙を流しながら、「でも、みんな笑うんだもん」とぽつりと呟いた。彼女はその言葉を否定せず、ただ頷いてこう答えた。
「笑われると辛いよね。でもね、笑う人が全てじゃないよ。私みたいに、あなたをちゃんと見てくれる人もいる。」
その日から少しずつ、女の子は心を開き始めた。次に会ったときには、自分の好きなことや夢について話してくれるようになった。そして数か月後、彼女は学校に戻る決意をした。
「学校は怖いけど、もう一度やり直してみる。」
その言葉を聞いたとき、彼女は静かにその背中を押した。
その子が学校に戻った後、彼女はふと自分の過去を思い返していた。かつて、同じように孤独を感じていた自分を支えてくれた人々。自分が経験したすべてが、今の自分を形作り、そして目の前の子どもたちを支える力になっている。
彼女は気づいた。過去の痛みや苦しみは消えることはないが、それを受け入れ、自分の力に変えることで、人は誰かを支える存在になれる。そして、その支えがまた新しい希望を生む。
今、彼女の夢は次のステージへと広がり始めていた。チック症や発達障害を抱える子どもたちが安心して学べる場を作りたいという願いが、彼女の中で芽生え始めていた。
「誰もが自分の違いを肯定できる場所を。」
彼女はその思いを胸に、未来を生きる子どもたちのために新たな挑戦を始めた。彼女の活動は、もう一人の力ではなく、多くの仲間たちとともに進む大きな輪となっていった。
この物語の終わりは、また新たな始まりです。彼女が紡いだ希望の物語は、次の世代へと受け継がれ、未来を明るく照らしていくことでしょう。
チック症の少女は、どう向き合ったか 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
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