第4話 自分を受け入れるための一歩

彼女は4年生の終わりごろから、少しずつ心に変化が起きていることに気づき始めた。転校生の男の子との出会いをきっかけに、学校生活に小さな「居場所」を見つけた彼女。以前は声を漏らすたびに周囲の反応を恐れ、自分を責める毎日だったが、その感情に少しだけ「疑問」が芽生えた。


「どうして私はこんなに自分を責めているのだろう?」


そんなある日、彼女は図書室で「チック症」という言葉を目にした。小さな医学の本に載っていたその説明を読んだとき、自分の症状に名前があることを初めて知った。「チック症は病気ではなく、脳の神経が関係している」という言葉に驚きと安心が入り混じった感情を抱いた。


家に帰り、その本のコピーを母親に見せた。母親は少し難しい顔をしていたが、こう言ってくれた。

「そうだったのね。知らなかった。でも、何があってもあなたは私の大事な子よ。」


その言葉に、彼女は涙が止まらなくなった。母親も気づいていなかっただけで、自分を否定していたわけではなかったのだ。


学校では依然として声や動きをからかわれることがあった。しかし、彼女はある日、転校生の男の子と話しているときにこう言った。

「私、チック症っていう名前があるんだって。」


彼は驚くこともせずに頷き、「名前があるってことは、それを持っている人もいるってことだよね。君だけじゃないよ。」と言った。その言葉が彼女にとって大きな救いとなった。


自分だけが変わっていると思い込んでいた日々。それが、自分の症状には理由があり、自分は「変わり者」ではなく「一人の人間」なのだと気づき始めた瞬間だった。


それから彼女は、少しずつ自分の声や動きに対する反応を以前より気にしなくなった。時にはからかわれることがあっても、胸を張ることができるようになってきた。もちろん簡単ではなかったが、自分を許すこと、そして理解することが「自分らしく生きる」ための第一歩だと感じるようになった。


周囲の冷たい目に傷つくこともあったが、それでも彼女はこう思った。

「私は私。それを認められるのは、自分自身だけ。」


※次回、第5話では、彼女が症状を理解したことで得た新しい視点と、周囲との関係の変化を描きます。

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