第6睡 偉大なる''祖父''(最近全然添い寝してなくてすみません…)
ピンポーン
朝の澄んだ空気を乗せて家のチャイムが鳴り響く。
どうやら
玄関へと急いで向かい、扉を開けた。
「よっ。おはよう」
「お…おはよう」
彼女は白色のシャツの上に少し大きめのカーディガンを羽織っており、肩からは黒色のショルダーバッグを提げている。
うん、文句なしの着こなしだ。
ハイカラな女子高校生そのものである。
って何様のつもりだよ…。
「……なによ。ジロジロ見て」
「えっ?い、いや。ただ」
「ただってなに……ど、どう?可愛いでしょ私」
「ほえ?そりゃかわ……」
「そりゃ可愛いだろ」と言おうとしていた口をつぐんだ。
こんな当然な事を聞いてくると言う事は…まさか俺を試しているのか…!?
イケてるやつはここでなんと返す…?
なんて言うのが正解なんだ…?
考えて考えて考えた末に俺が口にしたのは………
「…寧々は可愛いと思うか?」
「は、はあ!?可愛いと思うから着てるんでしょ!?」
案の定、怒られた。
これは自分でも愚かな返答だと思う。
はあ…もっと気の利いた事を言えるようになりたい。
まだまだ''自分で考える力''が俺には足りなさすぎる。
言うなれば優柔不断。マズイな…優柔不断な男ってウザがられるみたいだし…。
なんとか改善できるよう努力しよう。
「うん。俺も可愛いと思うぜ!」
「…!?」
とりあえず可愛いと言うことは実証されたし、せめてものと思い伝えておく。
「もう…ちゃんと自分の意見で言えっての…」
「え?」
寧々がボソリと何か呟いていた。
小さすぎるしもう扉の向こうへ行きかけていたのでかろうじて聞こえただけだ。
「なんでもない!行くよ!」
「お、おう!」
ちょいと機嫌を損ねてしまったのが申し訳ないが、俺はそれ以上にウキウキして外に出た。
なんでかって?
今日は日曜日。
約束していた寧々との買い物の日である!!
ーーーーーー
「そういえば予算ってどんだけあるの?」
日曜日の賑やかな街を2人で歩いていると、隣から寧々が聞いてくる。
そういやちゃんと見てなかったな。
確かに予算はきちんと把握しといた方が良いに越した事ない。
スマホを取り出し、銀行のアプリを開いて確認する。
「どれどれ………うわっ……!?」
「ど、どしたの?」
思わず言葉が詰まり、スマホの画面を凝視した。
都会の雑踏ですら目に入らなくなり、視界がクリアになる。
お、おいおいおい…なんだこの額…!?
ろ、ろぐじゅま……っ…これだけの金が今俺の銀行の口座にあると言うのか…!?
アプリに写っている猫も驚きのあまり毛繕いをやめて俺と目をパチクリさせている。
そりゃこんな額俺の口座に入ったことねえしな…。
嘘だろマジかよ…一瞬にして石油王にでもなった気分だ。
我が
「…ちゃんと買いに来たよって、記念の写真撮って送ろうと思う」
「お、良いんじゃない?絶対おじいさん喜ぶよ」
こんなにも俺のことを思ってくれるじいちゃんのために、しっかりと良い物を買ったと伝えてあげないと。
とりあえず買いに来たってことも。
そうと決まれば早速人混みから抜け、道の端に止まる。
そこでスマホをインカメにし、都会の街をバックに自撮りというやつに挑戦してみるぞ。
だがしかし、カメラに写ったのはトゲトゲ頭の俺だけだった。
肝心のあと1人がいない。
「おい、なんで離れてんだよ」
寧々がいつの間にか少し離れたところで、もじもじしながら俺を見守っていた。
自撮りにウキウキしてたのをまじまじと見られてたと思うと、恥ずかしいな…。
「いやだって、おじいさんに送るんでしょ?私いたら邪魔じゃん」
「なワケあるか。ほらこいよ」
「ちょ、ちょっと…」
俺は寧々の腕を掴み、隣に来させる。
そもそもこうして買いに来てるのだって彼女のおかげなんだし、むしろ俺がオマケで寧々がメインぐらいだろ。
「寧々は俺の家具を選んでくれるチョー重要で大切な人だろ?入らなねえでどうすんだ」
「で、でも…いいの?私入っちゃって」
「当たり前だろ?ほら、もっと寄れよ。あんま慣れてねえから…っおわっ…!」
あぶね、危うくスマホを落としかけた。
なんだよ自撮りって難しいな…腕つりそうだし。JKたちはきっと特殊な訓練を受けてる事間違いなし。
「もお…私が撮るから。かして」
「マジで?サンキュー!」
痺れを切らしたのか寧々が俺のスマホを取り、さっと構える。
流石現役JK。こう言った事は十八番だな。
「んじゃ撮るよー」
「おう!」
適当にピースとかしてみてると、シャッター音が3回ほど鳴った。少しだけ緊張したけど多分上手く撮れてるはずだ。
「はい、撮れたわよ」
「うおー!マジで助かった!んじゃこれを早速じいちゃんに送信…っと」
写真を選択し、じいちゃんのメールに送る。
うーむ、めちゃくちゃ良い写真だ。
男女2人で自撮りすると一気に学生っぽくなって良いな。この遊びに来た感じ、まさに青春。
「ね、ねえ?」
「ん?」
隣にいた寧々が俺のパーカーの裾を引っ張った。
「私にもその写真…送って」
「お?寧々も気に入ったのか?」
「ち、違うわよ!ただちゃんとメイクとかセットとか出来てるかなって…!」
「はは。なるほどな。努力を怠らないなんて偉いなあほんと。えーっと寧々は……」
メール一覧を見ても寧々の名前がない。
そういや登録して無かったわ。
「な、友だち追加しよう」
「いいの…?」
「え?当たり前だろ?これから長い付き合いになるだろうし入れておきたかったんだけど」
「そ…そうなん…だ」
「おう」
スマホで寧々の画面に映るQRコードを読み取って友だちに追加する。
その瞬間、じいちゃんだけだった俺のトーク画面に新たに寧々の文字が追加されたのだ!
ついに!人間の友達2人目!
溢れ返る企業アカウントたちも、さながら上場した時のように鐘を鳴らして喜んでくれている事間違いなし!
まっことめでたい!!
「うわあ…記念すべき2人目が寧々とは…」
「な…なにその言い方。嫌なの?」
「いや、
「ふぇっ」
ありのままを伝えると、寧々は小さく息をすっと吸い、そっぽ向いてしまった。
昔はもっと堂々としていた印象だったけど…今はけっこう表情がコロコロ変わると言うかなんというか…扱いがむずいな!
しばらく寧々はこっち向いてくれなかった。
まあいいか。こう言うのって時間が解決してくれるもんだしな。
ーーー寧々視点ーーー
「あ、じいちゃんから返信きた」
「え」
返信って…絶対さっきの写真のことだよね…!?わ、私のことどう思ってるのかな…?
気になるうううう…!
「ぶはっ。見てみろよ」
「え?どれどれ……」
いきなり笑ったと思ったらスマホの画面を見せてきた。
実はなんて返ってきたかめっちゃ気になってた事がバレないように、なるべくやれやれ風を装って目を通す。
『とても可愛い子。彼女?彼女ですか??』
「じいちゃん、直球すぎんだろ」
学のおじいさんからはこの一言。
あまりにも…単刀直入すぎるというか。
や…やっぱり私たちって側から見れば彼氏彼女に見えるのかなあ…えへへぇ…。
ま、まてまて。
気を緩めたら顔がにやけちゃう。
そんなとこ見られたらダメダメ…。
力入れて引き締めないと!
「な、なんて返すの?」
「え?そりゃあ女神のような友達だって言うよ」
「…なによ女神って」
「女神は女神だ」
最近の学はやたらと''女神''を強調する。
私、そんな大したことした覚えはないのに。
でも友達って言ってもらえるのは嬉しいなあ…
だって中学1年の時ぐらいからもうなんとなく話さなくなっちゃったし、それに再会した頃もあんだけ失礼なこと言っちゃったのに。
それなのに…長い付き合いになるだろうし…なんて…学って、なんだかんだ優しいんだよね…。
「ほら、バカなこと言ってないで早く見に行こ!」
彼の手を引いて催促する。
きっと今の私、すごく楽しそうにしてると思う。でも、これは隠さなくて良い!
だって真実だし!
「おう!」
私たちは再び人混みの中に入っていった。
ーーーあとがきーーー
みなさま…話の題にもあります通り…全然添い寝してなくて本当に申し訳ありません…。
しばし、学と寧々の買い物に付き合ってはくれませんでしょうか…(あと2話ぐらい)
そこからはしっかり添い寝しますので!
お楽しみにして頂けましたら!嬉しいです!
それでは、本日もお読みいただきありがとうございました!
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明日の更新もよろしくお願いします!
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