悩める美少女たちと添い寝する部活に入りましたのでぐっすり安眠させて頂きます
キノ
第0睡 ''添い寝部''ってなに?
「あの…先輩…。と、とてもこの状況では…その…寝れ…ないです…」
「そぉ?それじゃあほら、私の胸に顔を埋めて…んしょっ…。私の体温を、匂いを、声を…ぜぇんぶ感じて目を閉じて…」
先輩の綺麗で豊満な胸が、むぎゅっと俺の顔に押し当てられる。
「……ッ!!」
その瞬間、落ち着かなかった俺の心に不変の安寧が訪れた。
まるでそれは女神の抱擁の如く神々しい。
極楽も極楽、神々の花園だった。
彼女の胸の極上の弾力と蕩けるような柔らかさが、心地良いポカポカした体温が、ふんわりと漂う甘い香りが、俺の副交感神経を優しく愛撫し、眠りへと誘う。
「どう…して…こ……な……こ…に……」
段々と意識が薄れていく。
そしてついに、女神の胸に抱かれ眠りに落ちた。
ーーーーーー
一言で表せば、勉強勉強勉強勉強勉強……。
俺、
俺の母はいわゆる超が付くほどの教育ママってやつで、生活のほとんどを勉強に捧げて生きてきた。
この『浅井』という名字も気に入らないらしく、いつか絶対旧姓に戻すと息巻いていたな。
まあ、確かにそれに対抗して
まあとにかくそんな勉強漬けの毎日を送った結果、聞き分けの良い従順な母のイエスマンが生まれる筈もなく…。
反抗心たぎらせ、エリート高校進学を目前にして親しかった祖父を頼り、俺は母から逃げるように遠くの適当な高校へ入った。
そして一人暮らしを始めたのだ。
そこで俺は固く決意する。
「俺は…失った
こうして俺の、''青春探求''は幕を開けた。
ーーーーーー
「なあにが青い春だのアオハルだよ…。ブラックじゃねえか、クロハルだよ…」
入学して1週間。
俺はもう既に途方に暮れていた。
友達もいない、入りたい部活も見つからない、これといって趣味もない、およそ青春と呼べる事は出来ていない。
気づいてしまったんだよ。
青春に必要なのは『自身での決定』だ。
自身で何をするか決め、自身で考えて行動する。
生まれてこのかた、やることなす事何もかも母に決められてきた俺に、そんな力は微塵もなかった。
青春するための資格すらない。
分かった事と言えば、自分が知らずして母のイエスマンと化してしまっていたこと。
「はぁ……心底虚しいぜ………ん…?」
まだひんやりと肌寒い早朝の校舎を、デカいため息混じりに1人徘徊していると、目線の先にあった扉に何か看板らしき物がかかっているのに気づく。
あそこは確か空き教室だったはずだよな。
特に何かの部室という訳でもなかったし。
「………」
カツカツと廊下に俺の足音のみが響く。
……気になる。一体そこに何があるのか。
興味本位で看板を見てみると…
「添い寝…部…?」
看板には女子っぽい可愛らしい丸字でそう書かれていた。しかもダンボールに。
手作り感満載だ。とてもちゃんとした部活…だとは思えないが……どうなってるんだ…?
つかそもそも添い寝って一緒に寝る事だよな…!?の部…?
ますます訳が分からん。
「……」
一度辺りをぐるっと見渡し、誰も居ないかを確認する。
断じて添い寝に興味がある訳ではない。
これは…そう、調査だ。一体どういった集まりなのかという。
………いや、見苦しいな…本当は興味津々です。
とにかく!誰かに見られても厄介なので軽くノックをし、ゆっくりと扉を開け俺は添い寝部とやらに足を踏み入れた。
「……!ここは…!」
部屋の中に入った途端、ふわあっとした甘い香りが鼻腔をくすぐる。
室内を照らす暖色系の暖かな照明も相まって、行ったことはないがまるでマッサージサロンのような心地良い空間だった。
部屋にいるだけでリラックスする…。
「……ん?」
よく見てみれば部屋のど真ん中に布団が敷いてある。
それは大きく膨らんでいて、時折ゆっくりと上下していた。
まさか……本当に人が寝ているのだろうか。
頭が反対側にあるせいでよく分からん。
ゴクリ……
唾を飲み込む。
…確認せねば。
抜き足差し足で布団に忍び寄る。
どんな人物なのか、男か女か。
はやる好奇心を抑えてはいられない。
額から少し汗が滲んできた。
「…!」
穏やかな寝息が聞こえた。
人がいるのは確定だ。
ヤバい、けっこうテンション上がってきた。
ここまできたら肝心な顔を…顔を…!顔が見たい…!
……見えた。女子だ。メチャクチャ美人。
チョーカワイイ。
それに胸だ。一瞬見ただけなのに脳裏に焼き付かれている。デカい。チョーデカい。
まずい、衝撃で語彙が死んできている。
「……!!!」
俺は出口の方へ急いだ。
彼女のその圧倒的美貌が、眠る姫のようなオーラが、何かいけないことをしているのではないかと錯覚させる。
……いけないことしてるんだけどね。
とにかく…!バレたらマズイのは事実。
早く扉を開けて外に……!
ガラガラ〜
「………ッ!!??」
扉を開けた瞬間、居た。
さっきまでそこで寝ていた、美女が。
見たのは一瞬だったが、よく覚えている。
ふわりとした綿菓子のように繊細で綺麗な銀髪、物語の花であるお姫様のようなスラッとしたスタイル、そして……胸。
さっきは閉じられていた目も、半分開いていた。
寝ぼけているのかトロンとしているが、その目はまるで俺の心を何から何まで見透かしているかのようだ。
それにこの雰囲気…きっと歳上である。
俺と推定先輩は、扉の前でしばらくじっと見つめ合った。
なんとなく…気まずい。てゆうか、見れば見るほど綺麗な人だな…。
しかし、その沈黙を破ったのは彼女の方だった。
「添い寝、してく?」
先輩はそう一言、俺ににこりと微笑んだ。
ーーーあとがきーーー
読んでいただきありがとうございます!
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次の話の更新は5分後にされますので、引き続きこちらの作品をよろしくお願いします!!
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