第6話
「ん……あれ、もう朝?」
いつの間に眠ってしまったんだろう?寝た記憶がないのだけど、もしかして気絶するように寝た?寝る直前のことを思い出す。
「九条さん、起きましたか?おはようございます」
「漣さん。お、おはようございます」
……思い出した。昨晩は漣さんと愛し合ったんだ。恥ずかしさがこみ上げてくる私。けど、漣さんはいつも通り。
「初めては好きな人に捧げるって決めていたので。九条さんを抱けて幸せでした」
「こ、こちらこそ抱いていただき、ありがとうございます」
敬語でひとまずお礼を言った。
やっぱり、初めてだったんだ……。そのわりには上手かったけど、な。いつもは苦しさと痛みで早くこの行為から解放されたいと思っていたのに、昨日は違った。
漣さんにもっと抱かれていたいって、欲張りなことばかり考えていた。漣さんの年齢を考えると、一回が限界だと思っていたら、私の想像以上に漣さんの性欲は強かった。何度も何度も愛を注がれて、私も満足した。
久しぶりだ。この行為をして満足だと思える日が来るなんて。番ってすごい。信じていなかったけど、あんなことがあった今では信じてしまう。もう、漣さん無しじゃ私は満足出来ないかもしれない。
「九条さんが溜まっていたら、いつでも相手しますので」
「っ……」
耳元で囁かれる。朝から刺激的すぎ……。
抱かれてる間は普段とは違う男らしさがあった、な。スーツ越しじゃわからないほど着やせするタイプで、脱ぐと筋肉がそれなりについてて。
「お、お願いします」
私ばかりが満足していいのだろうか。今度は私から誘ってみようかな。初めてをしたばかりなのに、がっつきすぎかな?
「昨日はぐっすり眠っていたようなので、俺が朝食を作ってみました。よかったら一緒に食べませんか?」
「漣さんの手料理ですか? ぜひ一緒にたべたいです」
私たちはリビングに向かい、漣さんの作った朝ご飯を食べた。
「すっごく美味しいです!」
「それはよかった」
朝から爽やかスマイル。仕事も出来て、料理もできて、イケメンとか……これが所謂スパダリってやつ? 私の番がこんなにハイスペックなんて、漣さんと私が本当に釣り合うのかな?
「朝から冷たい飲み物を一気飲みすると、お腹を壊したり消化不良を起こす可能性があるので、温かい飲み物を用意しました。紅茶にハチミツを入れてみました。砂糖とは違った味がしますよ。たまには違うのもいいと思いませんか?」
そういって私にハチミツ入りの紅茶が入ったマグカップを手渡す。
「ん。ホントだ……ハチミツ入りも美味しいですね」
「気に入ってくれたようで良かった。俺は砂糖入りよりもこっちのほうが好きなんです」
「そうなんですか?」
「九条さんにも俺の好きなものを知ってほしくて」
「っ……!」
照れくさそうにしてる仕草がなんだか可愛く感じた。
私も漣さんのこと、もっと知りたい。漣さんの好きなもの、私も好きになりたい。
「あ、れ……?」
でも、なんだろう。急に眠気が襲ってきた。ご飯を食べたから眠くなったのかな? それにしたって、食べてる途中でこんなに眠くなることってある?
「昨日はたくさんヤッたから、きっと疲れてるんでしょう。ベッドに運びますね」
「私、重いので大丈夫です。一人で歩け……きゃっ!?」
「駄目です。転んで怪我でもしたら大変ですから。俺のいうことを聞いてください。ねっ?」
「は、はい」
ここは大人しく聞いておこう。そう思うくらい、眠気は強い。漣さんの言う通り、私ってば疲れてるのかな?
運ぶときにお姫様抱っこなんて……。お姫様抱っこしてもらう年齢でもないけど、女の子扱いされるのは素直に嬉しい、な。
「九条さん、おやすみなさい」
「おやすみなさい、漣さん。でも一つだけ聞いてほしいことがあります」
「なんですか?」
「昨日みたいに私の名前を呼んで、ほしい、です」
「わかったよ、美怜。君は本当に可愛いね」
ーーーチュ。っと、おでこにキスをされた。
「王子が眠り姫を見て一目惚れする理由、今ならわかる気がするよ」
「ふぇ……?」
意識が朦朧としてる私に漣さんがなにか呟いている。
「どこにも逃がさないよ、美怜。君は俺だけのモノだから」
「……」
漣さんが最後に何か重要なことを言っていたようだけど、意識を失った私には聞こえなかった。
恐ろしい、呪いの言葉。それはこれから先、私を苦しめることになるなんて……。
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