憐憫に棘
憑弥山イタク
憐憫に棘
死にたい。
生きることが難しい。
そんな言葉をよく耳にして、その度に私は、彼等に対して憐憫の情を抱く。
斯く言う私も、生きることに疲れた時期がある。クラスメイトとの間に生まれた溝。深く、禍々しい、泥水さえ美しく見える程の穢い溝。その溝の匂いに胃と心を壊され、死んでしまいたくなった。
私は、死にたくなれど、死ななかった。心と胃が壊されても、私の手は、首吊り用のタオルも、ナイフも握らなかった。脳が死を望んでいても、体が、死を肯定しなかった。
今、私は生きている。壊れた胃と心も、僅かずつ、ほんの僅かながら修復した。
ネットの海を泳ぐ度に、嫌な言葉が聞こえてくる。死にたい、生きたくない。血を吐くような声で呟く者達を見つけては、過去の自分と彼等を重ねてしまう。
故に、手を伸ばしてしまう。声をかけてしまう。何か手助けはできないだろうか、何かの役に立てないだろうか、そんなことを日々考えてしまう。
それが例え、私の血と命を吸い取る、毒の
私は、愚かにも手を伸ばしてしまう。
憐憫に棘 憑弥山イタク @Itaku_Tsukimiyama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます