ペガサスの子

@busukou-ai

第1話

 ペガサスのお母さんは、ごくごく普通の馬の子を一頭産みました。

 ペガサスの仲間は、ペガサスの子どもなのに羽も角もない!と、悲しそうに叫びましたが、

 馬の子は普通に、牧舎に入れられて、普通に草を食み、他の馬の子と一緒に草原を駆けました。

 ペガサスの子どもは、僕は普通の子馬に生まれたけど、十分幸せです。と、

 うちのお母さん確かに純白の毛で、光る大きな翼に大きな角で綺麗ですよね、と。

でも僕は普通の幸せでいいのです、と。

 ある日、ペガサスのお母さんが、翼のない我が子供に、せめて一度、大空を一緒に飛んで、地上からこの世界を見せたいと思いました。

 子馬が小さいうちに、実現させようと思いました。

 ペガサスのお母さんは、ある夜、人間たちが寝静まったあと、牧舎に現れました。

 子馬は少し眠そうにしていましたが、お母さんがそんなに地上からの光景を見せたいんなら、僕は行きます。と、

細い四つの足でぴょんと立ち上がりました。

 ペガサスのお母さんは、両足で馬の子を抱えて夜の街を月に向かって飛び立ちました。

 どう?空を飛ぶ気分は?

 子馬は少し怖いけど、お母さんがいるから大丈夫だと小声で言いました。

 いつも駆けている草原が、豆粒くらいに小さく見え、近くの教会の屋根の十字架を掠るくらい低くも飛びました。

 お前が羽無しで生まれたとき、わたしは正直、少し悲しかった。親子で飛ぶことができないんだろうか、と。

 お前と一緒に飛ぶのは今日限りだから、しっかりその目で地上、お空の星を、近い近い月を見ていなさい。

 子馬は母親に抱かれて、空を舞いました。

 そして空を旅したあと、地上に降ろされた時、僕は羽無しで、生まれてやはり、空を飛ぶより地上で土を踏んで駆ける方が性に合ってる感じだと率直に意見を述べました。

 それで、お母さん。僕は十分幸せですよ。と。

 それから、子馬は大きくなり、普通に美しい栗毛の雌馬と結ばれ、四匹の子供が生まれました。

 その中の一匹は美しい羽と角を持ったペガサスでした。

お母さんペガサスは、本当に喜んで、この子は預かりますと、喜んで連れて行きました。

 子馬はよかった、親孝行が出来て。今日も、空を見上げて、残された三匹の普通の馬の子たちと笑顔で過ごすのです。

 お母さん、本当に僕はこれで幸せなんですよ。何もみんなが空を飛ばなくたってねって。


おわり


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