第14話 恋焦がれている
私は叔父上が用意してくれた魔道車に乗っている。その私の隣には、書類上の夫となったランドルフ・アルディーラがいる。
そして茶髪の黒騎士が、車の運転手をしてくれていた。
「モンテロール侯爵様から、本日はいつでも来てもらっていいと、返事を承っておりますので、このまま向かわせていただきます」
恐らくこれも、叔父上がお膳立てしてくれたことだろう。なんともムダがないスケジュール。
「ああ、あと王太子殿下にも謝罪に行きたいのだが、連絡を付けてくれるように叔父上に伝えてくれないか?」
「直ぐには無理かもしれませんが、手配しておきます」
王太子とのアポイントメントは、三日後ぐらいを見ておいたほうがいいだろう。行きたくはないが、最低限の礼儀だ。
そして、私は隣に座って、無言で私を見下ろしている者を見上げる。
「ランドルフと呼んでいいだろうか?」
「お好きに呼んでください」
……敬語か。堅苦しいな。まぁ、直ぐに馴れ合うのは難しいだろうから、おいおい直してもらえばいいか。
「アルディーラ公爵様にも挨拶に行きたいのだが、貴殿から連絡を取ってもらえないだろうか」
「ランドルフです」
「ん?……ああ、ランドルフに頼みたい」
「公爵には手紙を送りつけるだけで構いません」
それはあまりにも無作法というものだろう。婚姻は貴族の家同士のつながりを意味する。この辺りを端折ることはできない。
「それは失礼だろう」
「あのような者は父ではありません」
……これは親子の確執というものがあるのだろうか。仕方がない。私から連絡を入れることにするか。
それよりも保留にしぱなっしだったことを、きちんと言わないといけないな。
「アルディーラ公爵様には私から連絡を入れるようにしよう。それから、国王陛下と叔父上から、私の夫になるように命じられたのだと思うが……」
「ひっ!」
……何故運転手から悲鳴が聞こえてくるのだ?
「二十五にもなる私の夫になってしまったことには、本当に申し訳ない」
これって絶対に罰ゲームか何かだと思うな。二十五歳の行き遅れの女というだけでなく、辺境伯という位持ちだ。夫となるものは、妻に従わなければならない。これはこの国の考え方からすれば、かなり屈辱的なことだと思う。
運転手。ガタガタ震えていないで、しっかり運転に集中してくれ。王都の道路事情は整備されているとはいえ、石畳は直ぐにガタつく。気をつけて運転して欲しいものだ。
「愛人を召したいというのであれば……」
「シルファ」
私の言葉をさえぎるように名を呼ばれたのだが、そっちの名で呼ぶのか? だいたいリリア呼びされるのにシルファなんて呼ばれたので驚いて、思わず言葉を止めてしまった。
「肝心なことを言い忘れていました」
「な……なんだ?」
金色の魔眼が光っているように見えるのは気の所為か?
「お慕いしていますという言葉では足りませんでした。
……こ……こいこがれている……え? 私に?……それって私に言うことなのか? 言う事なのか……。
「今回のシルファの伴侶候補には自ら立候補して、団長とアンジェリーナ殿下に頭を下げて頼み込んだしだいです。先程も言った通り、弱冠十三歳で辺境伯の地位を受け継いだシルファの役に立つために、強さを求めていたのです」
段々と顔が熱くなってくる。
私はてっきり叔父上と国王陛下に命じられたと思っていたのだが……私の役に立つため? アルディーラ公爵子息であるランドルフが?
昔一度だけ手を差し伸べた私のために?
「そんな
「あ……すまない」
何かわからないが、凄く怒っている。いや、領地の奴らは結婚相手は若い子が良いなとか言っているのを耳にしたし、貴族の令嬢は基本的に二十歳までに結婚するのが普通だ。
行き遅れの私と結婚するのだから、愛人を作って良いぞという意味だったのだが。何かが気に障ったのだろう。
「わかっていただければ、いいのです。今後愛人というくだらない話は出さないでいただきたい」
「ああ」
わかった。愛人の話題は今後出さないでいいということだな。まぁ、必要になったら申し出てくれることだろう。こそこそとされるのだけは、問題があるので止めて欲しいが。
そして、私は何故かランドルフの方に引き寄せられた。
「モンテロール侯爵令嬢の前では、私の隣に居てください」
「何故だ?」
「シルファがモテるからです」
……全然理由になっていない。そもそもモンテロール侯爵令嬢は女性だぞ。
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