第46話

「どうして…しぶやくんを…なぐっ…ひっく。」


やっと出た声は想像以上に涙声で、とてもじゃないけど言葉にならなかった。


ベッドから立ち上がった北斗が、珍しく狼狽えているのがわかる。


無惨なわたしに気を遣ってか、拓海くんが哲平くんを引きずるようにして、そーっと部屋を出て行くのがわかった。





「どうして、…なぐったのぉ。」


「ごめん…。」


いつもは王様みたいに強気な北斗が、それしか言わなかった。


きっと、自分は悪くないのに。


多分…多分だけど、わたしのために渋谷くんを殴ったのに。







わたしには、わかるんだ。


…北斗はいつも、わたしのことを守ってくれるから。






道端で転んだ時も、ブランコから落っこちた時も。


北斗は散々わたしをけなした後で、必ず手を差し伸べてくれた。


「ほら乗れよ。」って、投げやりに背中を向けて。


だけどしっかりしっかり、わたしをおぶってくれたんだ…。

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