第8話

北斗に連れられて来たのは、校舎裏の人目につかない中庭。


緑の芝生がそよそよと風に揺れている。





「はあっ。」


わたしは北斗の腕から解放されると、小さく溜め息をついた。


それからごそごそとポケットを探り、取り出したのは数枚の絆創膏。


「また喧嘩?いい加減にしてよね。」


ブツブツ言いながら、北斗の口元の傷にぺタリとそれを貼る。






「いってぇ、もっと優しくしろよ。」


「なら保健室行けばいいじゃん。」


「やだよ、説教されるもん。」


「ならつべこべ言わないで。他はどこ怪我したの?」


「…腕と足と、口ん中。」






北斗は腕や足をめくる。


わたしは北斗の変色した数ヶ所の傷や打ち身に、絆創膏や湿布をペタペタと貼っていく。


「湿布まで持ち歩いてんの?さすが、香夏ちゃん。でも湿布臭かったらババアみてえだぞ。」


「誰のせいだと思ってんのよ。」


「いででっ、傷をたたくな!」





北斗はブウブウ言いつつも、何だか少しうれしそう。


まあ赤の他人が見たら、ちっともうれしそうには見えないだろうけど。


わたしにはわかるんだ、北斗との付き合いは長いから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る