第18話 本当の気持ち
どうしてこうなった。
正面には緊張の面持ちの
そして極めつけは、俺の隣で何故か彼女面するノエル
「はい、そうちゃん。あーん」
ノエル
それは一体何のつもりだ。
「あの、ノエル
「もうっ、せっかく美味しいのに。そうちゃんったら」
俺たちのやり取りで
「そうちゃむってノエル先輩と仲良いんだ」
「えっと……これは……」
もう隠し切れない。幼馴染なのは言うしかないか。
俺がシエルに目配せすると、彼女は小さく
「実は俺、姫川姉妹と幼馴染なんだよ」
「えーっ!」
「先に言ってよ! 何か怪しいって思ってたんだよね。林間学校の時もさ、しえるんと余所余所しいのに、実は仲良さげだし。そんで、しえるんがピンチの時は真剣な顔で助けに行ってたし」
シエルを助けた話でノエル
「そうちゃん、良い子~良い子~」
「ちょっと、俺は子供じゃないぞ」
「良いの。シエルちゃんを助けてくれたんでしょ」
ノエル
さっきまでは謎の威圧感があったのだが。
「ありがとう、そうちゃん」
「べつに……当然のことをしたまでだよ」
そう、当然のことだ。俺がシエルを守るのは。
何だか分からないが、遠い昔にそう誓った気がするから。
「でもさ」
不意に
「アタシ、ライバルはしえるんだと思ってたけど、もっと強力なライバルがいたんだ」
「は? 何のことだ」
俺の質問に、
「ちょっとぉ、このニブチン男をどうにかしろしー」
「おい、何だそれは」
何だかバカにされている気がするぞ。
おかしい。俺は真面目に人生の荒波を乗り越えているだけなのに。
「ふーん、そうなんだ」
ノエル
あれっ? さっきまでニコニコだったのに。
「えっと、ノエル
「怒ってないよぉ」
「お、おう……」
「それより、そうちゃん。さっき付き合うとか言ってなかった?」
ギクッ!
「そ、それは……そ、そう、振りです。彼氏の振りをするって話で」
「そうそう、アタシが頼んだんですよ。友達の前でだけ演技して欲しいって」
俺の話に
「そうなんだ。でもね、付き合ってるって嘘を言っちゃうと、後々困ることになると思うの」
ノエル
「それに、そうちゃんが他の子と付き合うなんてヤダ」
そっちが本音かい!
「あの、ノエル
「やだやだぁ。そうちゃんは私が育てます」
「おかんか!」
まったく、このお
おっと、そんな冗談やってる場合じゃないな。
「でも、このままだと
「それは……そうよね……」
ノエル
「お願いっ! ノエル先輩、ちょっとだけそうちゃむを貸して」
これでノエル
優しくて色々許してくれそうなノエル
「うぅううぅ~ん……」
あれっ? ノエル姉が不服そうな顔をしているのだが。
おかしいな。いつもは俺が頼むと色々許してくれる感じなのに。
困った顔のノエル
「じゃ、じゃあ……そうちゃんが一つお願いを聞いてくれるなら」
「何だそんなことか。何でも良いよ」
「うふっ♡ もう取り消せないからね。そうちゃん」
今一瞬ノエル
まあ、気のせいかな。
「わ、私も……」
さっきまでジッと俺を見つめていたシエルが口を開いた。
「どうした、シエル?」
「何でも一つお願い……」
「ああ、べつに良いけど。きょう……お、幼馴染だし」
一瞬姉弟と言いそうになった。
まあ、義理とはいえ姉弟だからな。お願いくらい聞いてやろう。
これで義理姉妹の了承は得たな。
「そういう訳で協力するよ。
「ありがとー! そうちゃむ」
「あくまで仮にだからな。ヤリモク男に狙われたら怖いだろうから」
俺が説明すると、シエルも小さく
好きでもない男から告白されまくるシエルには共感できる話なのだろう。
「そうよね。せっかくシエルちゃんやそうちゃんとお友達になってくれた子なのに、このままにはできないわよね」
ノエル
かと思ったのだが。
「でも付き合うってのはダメだよ。あくまで気になる男子で付き合いたいって話にしよっ」
おいおい、やっぱりノエル
「もうそれで良いから。よろしくね、そうちゃむ」
「
こうして俺は、
ファミレスを出た俺は、指を組んだまま背伸びをする。
「んん~ん」
このところ俺の省エネモードが崩れまくりだ。
超可愛い義理の姉妹ができ、俺を振った女子が隣の席になり、今度は仮の彼氏未満かよ。
「シエルちゃん、あの服かわいいかもぉ」
「お
「シエルちゃんが厳しいよぉ~」
性格が正反対なのに仲がよさそうな姫川姉妹の後ろ姿を眺めていると、いつの間にか
「じゃ、明日が本番だからよろしくね」
「分かったよ。ここまで来たら話を合わせておくよ」
「ありがと、そうちゃむ」
不意に彼女が顔を寄せる。
「あの……さっきアタシが言ったの……マジだから」
「えっ?」
さっき? 何のことだ?
「もうっ! この鈍感男」
ドンッ!
俺の肩に体を当てた
◆ ◇ ◆
少女の声がする――――
そう、これはいつもの夢だ。
俺は部屋のベッドの中で夢を見ているのだ。
『そうちゃん、いつも〇〇〇ちゃんの面倒を見てくれて偉いね』
ほんわかした声。優しい笑顔。この子は、お姉さんの方だ。
あれっ? いつもと夢の導入部分が違うぞ。
『当然だ。俺が〇〇〇を守るんだからな』
小さな俺が言う。精一杯背伸びをして。
『偉いね。そうちゃん、良い子~良い子~』
『俺をガキ扱いすんなー』
『良いの。〇〇〇ちゃんを助けてくれたんでしょ』
そのお姉さんに頭を撫でられると、自分は認められたのだと心から嬉しくなる。
俺は頼りにされているのだ。
誇らしい気持ちだ。
まるでヒーローになれたように。
『〇〇〇
それは淡い恋心なのだろう。
俺はきっと……〇〇〇
『そうちゃぁ~ん』
今度は妹の方が走ってきた。
ドテッ!
あっ、転んだ。
『うわぁああぁ~ん! いたいよぉ~!』
慌てて俺のところに駆けてきたからだろうか。いつもの公園に入ったところで、〇〇〇は思い切り転んでしまったのだ。
『大丈夫か〇〇〇?』
『わーん、いたいよぉ』
『傷は浅いぞ。衛生兵ぇ~』
何かの映画に感化されている俺は、衛生兵と叫びながら少女を公園の水道へと連れてゆく。
ザァァァァァァ――
少女の擦りむいた膝を水で流して綺麗にする俺。涙を浮かべた少女はされるがままで脚を伸ばしていた。
その光景を、姉の方は微笑みながら見ている。
『よし、これで大丈夫だぞ』
『うん……』
少女は小さな俺にしがみ付きながら
擦りむいた膝にはハンカチを巻き付けてある。
『ありがとう、そうちゃん』
『おう、〇〇〇がピンチの時は、必ず俺が助けるからな』
『これからもずっと、助けてくれるの?』
『当然だぜ! 絶対に助けてやるぞ。断罪天使は嘘つかない』
断罪天使はやめろ。恥ずかしい。女の子の前で美少女アニメの真似はやめてくれ。
ガチャ!
その時、俺は部屋のドアが開く音を聞いた。
――――――――――――――――――――
遂にこの時がきてしまった……。
深夜に部屋に忍び込む者の名は?
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