甘々姉と嫉妬妹に愛されすぎる同居生活♡ ~親の再婚で幼馴染姉妹と家族になったけど、どっちも愛が重くて寝かせてもらえないのだが~

みなもと十華@書籍&コミック発売中

第1章 思い出の少女

第1話 深夜に姉萌え催眠する義妹

壮太そうたはシエルを好きになる……壮太はシエルを好きになる……壮太はシエルのことが大好き……」


 午前零時を過ぎた頃、義姉のシエルは俺の部屋に忍び込み、耳元で変な催眠を掛けるのが日課だ。

 義姉と言っても実は義妹だが。


「壮太はシエルを好きになる……もうシエルのことしか考えられない……」


 耳にかかる微かな吐息といき。甘くとろけるようなささやき声。風呂上りの髪から漂うシャンプーの香り。

 その全てが俺の感情を揺さぶる。


「はぁい、壮太はシエルが大好き。壮太はシエルが大好き。もう一度、壮太はシエルが大好き。リピートアフターミー」


 何が『リピートアフターミー』だ。つい笑いをこらえ切れず吹き出しそうになっちゃっただろ!


 本人は気付いていないのだろうが、実のところ俺は寝たふりをしている。

 先日、ふと目を覚ました時は愕然がくぜんとした。あのクールでダウナー系のシエルが、こんな変な行為をしているのだと。


 そう、俺とシエルが一緒に住むことになったあの日から、執拗に姉萌えの催眠をするシエルと、それに気付かないふりを続ける俺との、奇妙な関係が始まったのだ――――



 ◆ ◇ ◆



 時間は少し巻き戻り、三月中旬――――



 世の中は平等じゃない!

 そんなこと、この春で高校二年を迎える俺、安曇あづみ壮太そうたにも、もうとっくに理解できていた。


 親の離婚とコミュ力がものをいう恋愛格差社会。この二つで人間関係にうんざりしていた俺は決めたのだ。

 省エネモードで生きようと。


 そもそも女子に関わるとろくなことにならない。そう、いつだって女子は思わせぶりな態度ばかりで。


 中学の卒業式の日、俺は親しくしていた女子に思い切って告白した。

 だが、結果は玉砕。

 あの出来事は、今でも俺の中で黒歴史として刻まれている。


 きっと、あの子も同じ気持ちだっただろう。俺が余計なことをしたせいで、気まずくさせてしまったから。


 薄氷はくひょうを踏むように難しい男女の機微きびなんて、俺のようなコミュ障がするべきじゃないんだ。


 そう、女子は二次元に限る。それが、この俺が出した結論だった。


 だがしかし、そんな俺の主張は、もろくも崩れ去るのだった。ある美人姉妹の出現によって。


 それは突然の出来事だった。進級前の三月、この俺に今世紀最大級の衝撃が襲い掛かるとは誰が予想しただろうか。


 今世紀最大なんて大げさだって言われそうだが、女子のうなじを見ただけでドキドキしてしまう思春期まっただ中の俺には、そのくらい重大事件だったんだ。


 おい、女子に関わらないんじゃないのかって?

 うなじとわきは別だ。



壮太そうた、お父さんな、再婚することにしたよ」


 朝食時、父親に突然そう告げられたのが事の始まりだ。


「は? 再婚……?」

「ああ、壮太も大人になるし、そろそろ手も離れる年頃だろ」

「えっ……」

「再婚しても良い頃かな。な、なんてな」


 戸惑っている俺を置いてけぼりで、この父親はどんどん話を進めてしまう。


「ほら、壮太も会ったことあるよな。小さい頃に近所に住んでいた乃英瑠のえるちゃんと詩愛瑠しえるちゃん姉妹。引っ越したんだけど、最近離婚してこっちに戻ってきたらしくてな。そのお母さんの莉羅りらさんと、偶然駅前のカフェで会って――」


 親父おやじの恋の話など全く興味はない。でも、それが義理の姉妹ができるとなれば話は別だ。

 同年代女子が家族になるなんて、冷静ではいられるはずがない。


 そもそも俺の主義に反する。


「そういう訳だからさ、今度の日曜日に一緒に食事会をするんだよ。顔合わせを兼ねて。予定を開けといてくれよな」


 そう言って親父は、俺の返事を待たず出勤して行った。いつもコミュニケーション不足な気がする。

 いや、気のせいじゃない。



 ダイニングテーブルに一人残された俺は、一気に実感が湧き出してくる。


「待てよ……待て待て待て! 同年代女子と同居だとぉおおおおおおおおお!」


 思わず変な妄想までムクムクと膨らむくらいに。


「それってマズくないか? うっかり風呂に入ろうと脱衣所に入ったら、ラッキースケベ的なイベントが起きたりとか。こっそり部屋でスッキリしようとしてたら、偶然入ってきた女子に見られてしまったりとか。って、待てよ! こんな妄想してたらキモがられて俺が終わる!」


 ラブコメアニメのようなシチュエーションには憧れるが、現実で義理の家族から嫌われたら地獄しかない。


「そういえば、小さい頃に幼馴染のお姉ちゃんがいたような……。ノエルねえだったかな? もう一人は……思い出せない」


 何故か俺は小さい頃の記憶が曖昧あいまいだ。近所に住んでいた姉妹と遊んでいたような気がするけど、その部分の記憶だけスッポリ抜け落ちている。


 自分でも何故なのか分からないのだが。


 そんな妄想と不安と心配を巡らせているうちに、すぐ運命の日は訪れるのだった。



 ◆ ◇ ◆



 ちょっと良い感じに夜景の見えるレストラン。その窓際の席に、俺たち安曇あづみ家と先方の姫川ひめかわ家が向かい合って座った。


 親父と義理の母親になる予定の莉羅りらさんが簡単な挨拶を交わしている。


 莉羅りらさんは38歳とのことらしいが、とても二児の母親には見えない。どうやら北欧系ハーフらしく、輝く金髪ブロンドと深い青の瞳が印象的だ。


 シックなよそおいの服を内側から持ち上げる巨乳グラマラスなボディが目の毒で、つい視線をらしてまった。


 バツイチ子持ちでも、この若さと美貌なら相手はいくらでもいそうだが。どうして親父と再婚したんだ。

 親父にはGAFA的な財産も高年収も無いぞ。


 そんな疑念を抱いていると、続いて姉妹が自己紹介を始める。


「そうちゃん、久しぶりぃ。また会えて嬉しいな」


 そう言って身を乗り出したのが、姉の乃英瑠のえる。この春から高校三年生だ。


 吸い込まれそうなほど綺麗な瞳に、艶やかな金髪ダークブロンドのロングヘアーをした超絶美人。すらっとしなやかなプロポーションなのに、母親譲りの大きな胸が強く主張している。


 雰囲気は優しそうなお姉ちゃんといった感じだ。


「えっと、ノエルねえですよね。すみません、あまり小さい時のことは覚えてなくて」

「あっ、そ、そうよね。ごめんね」


 俺の返答で、急にノエルねえが心配そうな顔になる。

 子供の頃の俺は一体何をしたんだ?


 続いて妹の紹介になった。


詩愛瑠しえるです。よろしくお願いします」


 姉のノエルとは対照的に、全く表情を変えずクールな態度で挨拶したのが妹のシエルだ。

 俺と同い年で、高校二年生になる。俺のほうが少しだけ誕生日が早いので妹になるらしい。


 こちらも凄い美人なのだが、ふわっと優しそうな印象のノエルねえと正反対で、クールでピリッと張り詰めた感じだ。


 姉と同じ艶やかなダークブロンドの髪が美しく、それをポニーテールにしている。

 まばゆいばかりにスタイル抜群だが、姉と違って胸の主張は少し控えめだ。いや、姉が大きすぎるだけかもしれないが。


 少し気崩した制服が今時のJKっぽい。氷の女王のようにクールな態度も相まって取っ付き難い美人といった印象だ。


 小さい頃に会っているはずなのに、何故かシエルの記憶はすっぽり抜けているんだよな。

 そんなことを考えながら、俺は軽く頭を下げた。


「よろしくお願いします」


 覚えていない気まずさからなのか、俺まで簡単な挨拶になってしまう。



 つつがなく顔合わせは進み、莉羅りらさんとノエルねえが乗り気なこともあり再婚の話は固まったようだ。


 ただ一人、シエルだけを除いて。


 ジィィィィィィィィ――


 さっきからシエルが俺を睨んでいる。穴が開きそうなくらい凄い目力で。

 なまじ超絶美人なだけに怖さも百倍だ。


 おいおいおい、睨んでる! すっごい睨んでるんですけど! もしかして……シエルは再婚に反対なのか? てか、俺って嫌われてる?


「んっ……」


 おい、その顔は何だ?

 気になるだろ。


 この時の俺は知らなかったのだ。この義妹になる超可愛い美少女が、ちょっと変わった趣味があり、この俺に変態的で強烈な執着があることに。






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