第8話

三年になって間もなくのサークルのときだった。



サークルといっても、洋風居酒屋でのただの飲み会だけど。



いつものように春馬からは遠く離れて、拓斗や琴美と飲んでいた私は、トイレに行きたくなって席を離れた。



トイレからの帰り、廊下を歩いていると、廊下の中腹にうずくまっている男の人を見つける。



「あの、大丈夫ですか?」



酔っぱらって、席が分からなくなったんだろうか?



そう思って声を掛けたんだけど、その人の顔を見て、あっと叫びそうになった。



それは、春馬だった。



くせ毛風のパーマがかかったアッシュブラウンの前髪をかき上げて、春馬のどこか冷たい眼差しがまっすぐに私に向けられた。



その瞬間、私は「しまった」って思った。



同じサークルにいるとはいえ、春馬とは関わらないようにして来たから。



でも、もう後には引けなかった。



それに春馬は本当に具合が悪そうで、純粋に心配になったっていうのもある。



「春馬くん・・・大丈夫?」



しゃがみ込んで顔を覗き込めば、春馬は私をじっと見つめたまま静かに首を振った。



だから私は店員さんを呼んで、お水とおしぼりを持って来てもらった。



酔った人の介抱なんてどうやったらいいのか分からなかったけど、お水を飲ませて春馬の額に浮かんだ汗を拭いてあげれば、春馬の顔色は幾らか良くなってきた。

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