第11話

フェンスの向こうには、少し距離を置いて古びた民家が立ち並んでいた。


その家と家の間に、僅かながら隙間がある。


そこからは民家の裏側に広がる、ただっ広い空き地が見渡せた。


何もない、ただ黄土色をした土だけが広がるその空間。


その頭上には、近隣の工場から吐き出された灰色の煙に染まる汚ねえ空があった。


アイツはフェンスぎりぎりのところに行儀良く体育座りをして、じっとその空を眺めていた。







薄い茶色をした髪が、風に揺れている。


草の上に放り出された裸足の足は、傷だらけで痛々しかった。


アイツの靴は、いつだって何処かに消えてしまうんだ。


まあ俺は、それが誰の仕業か知ってるけどな。


コイツだって、そうだろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る