第4話

────15歳の夏のある日。


その男に、たまたま街で出くわした。







車の排気ガスにまみれた真昼の繁華街の街角を歩いていると、明らかに柄の悪そうな男達がゲラゲラと嫌な笑い声を響かせていた。


手には煙草、角刈り頭や金色の頭。


Tシャツの半袖から伸びた上腕部には、花や龍の入れ墨。


行き交う人は皆、彼らを避ける様に遠巻きに見ながら歩いている。


見た感じで、すぐに分かった。


どう見ても、カタギじゃねえってな。







厄介事は御免だから、俺もそいつらを避けて通ろうとした。


だがその時、その内の一人とばっちり目が合ったんだ。


少し小太りで短髪の、嫌に目だけが据わった男。


見た瞬間、やべえって思ったよ。


そいつの妹に、数日前に手を出したばかりだったから。







名前は何だったっけ?


ありきたりな、名前だった。


誘われて家に着いて来てみりゃ、とんでもなくデカい屋敷だった。


そこに、あの男がいたんだ。


確か庭にあるプールサイドで女を侍らせながら、のんびり日に当たっていた。


通り過ぎた時に、ちらりとだけ俺を見たのを覚えている。

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