冷たい現実

第1話

◇◇◇



初夏の風がサラサラと吹き抜ける、校舎の隅の非常階段。




そこにわたしを呼び出した彼は、真っ直ぐにわたしを見て言った。









「好きだから、俺と付き合って。」








――…




「はい。」




小さく答えたわたしに、彼は目を丸くして何度も「ほんとに!?」と聞いてきた。




黙って頷くと、彼は子供みたいに笑って「やりぃ!」とガッツポーズをした。




「こういうの初めてだからすっげえ緊張した!あ、俺、Aクラスの真田晴って言うんだ。」












そんなこと、とっくに知ってたよ――。




だって、わたしも晴が大好きだったんだから――。









光の粒の中でキラキラと輝く、淡くはかない記憶。




晴の無邪気な笑顔を、まるで昨日のことのように覚えている――。



◇◇◇

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