闇色の彼

第4話

年季の入ったアパートのドアを、ノックする音がする。



続いて聞こえてきたのは、耳慣れた透也(とうや)の声だった。



「昂(あきら)、行くぞー」



「待って、すぐに行くから」



洗面所にいたわたしは、声を張り上げる。



セミロングの黒髪を整え、セーラー服の緑のリボンを結び直してからドアを開ければ、いつものように涼しい顔をした透也がいた。








「おはよう、昂」



「おはよ……、透也」



「何だよ、お前。今日も化粧っけないな。一体何に時間がかかってんだよ」



「ほっといてよ。透也の来るのが早すぎるのよ」



「仕方ないじゃん。昂に会いたくてさ、つい急いじゃうんだよ」



「何よ、……それ」



「あ、照れた? 冗談だって、本気にすんなよ」






ハニーブラウンのサラサラの髪を揺らして、ははっと透也は笑った。



学校中の女子から、王子様、なんて形容される透也のことだ。意地の悪い笑い方のはずなのに、それでも持ち前の清涼感は拭いきれない。

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