第8話
「楽しみにしてますね、何着て行こうかな」と、女みたいなことを電話の向こうで嬉しそうに呟くハオ。
最後に、「じゃあヒヤマさん、また後で」と言い残してからハオは一方的に電話を切った。
────『ヒヤマさん』
最後のハオの声が、頭の中で山彦の様に繰り返し響く。
───いつからだろう。
他人に自分を、名前では無く苗字で呼ばせるようになったのは。
無意識だった。
2年間、毎日あの女に「ヒヤマ」と呼ばれ続けたからだろう。
いつの間にか俺は、他人に名前で呼ばれることに違和感を覚える様になっていた。
だから名乗る時はいつも、「ヒヤマ」と苗字を名乗るようになっていた。
そして今でも繰り返し思い出しては、体中が乾いた様な気持ちになる。
────あの女は俺に抱かれている時は、絶対に俺の名前を呼ばなかった。
あの女は俺に抱かれ体中を奪いつくされながらも、いつも遠くを見つめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます