第5話

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徐々に開いた瞼の向こうに見えたのは、小汚ない煤けた灰色の天井だった。


俺の手は、僅に宙に浮いたまま。


夢の中で、あの女の頬に手を伸ばし掛けていたからか───。


虚ろな目をして俺を見ながらも、絶対に俺の名前を呼ぼうとはしない彼女の頬に。







ため息を付いて、体を起こす。


そして、ベッド脇に置かれたサイドテーブルの上にある煙草に手を伸ばした。


煙草を口にくわえライターで火を付けてから、ゆっくりと白い煙を吐き出す。


吐き出された煙は殺風景な部屋の中を漂い、やがてうっすらと消えて行った。







───何度目だろうか。


あの女の夢を見るのは。

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