第2話
あの女が去った後、あの部屋の床には白い花弁《はなびら》が所々に落ちていた。
開かれた扉の向こうから舞い込んで来た夜風に煽られ、部屋中に散ったんだろう。
静まり返った部屋で、俺はただそれを眺めていた。
────『あいつ』は、俺の全てを奪って行ってしまった。
残されたのは、微かな火薬の臭いと。
薄汚れた部屋中に染み込んで離れない、あの女の香りだけだった。
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