第11話

「私、夏帆って言うの。よろしくね! 亮二と同じバンドでドラムしてます。あ、亮二と同級生だったってことは、カナくんとも知り合いなの?」



電光石火のごとく自己紹介を済まし、私の手を取ってブンブンと半ば無理矢理な握手をした夏帆ちゃんは、後ろを振り返る。



「おーーい、カナくんも知ってるの!? キョーコちゃんのこと」






彼は遠目から見てもあからさまに表情を固くすると、ようやくこちらへと歩み出した。



徐々に迫る彼の表情には、喜びの欠片もない。



思わず、体が委縮してしまうほどに。






「夏帆」







近づいてきた彼が、背後から夏帆ちゃんに声をかける。



「もう行くぞ」



「えっ? 何々? キョーコちゃんのこと、知らないの?」



どんぐりに似た目を見開き、狼狽えている夏帆ちゃん。



そこで彼は、スッと睫毛を伏せて。



冷えた眼差しを、私に浴びせた。











「知らねえ」

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