美しい男

第7話

リンファの家は、古本屋だった。


古本屋なのに、入口には古本に紛れていつも林檎を置いていた。


少し大きめの籠に、両腕で抱えれるくらいの量の赤々とした林檎達。


初めて見る人からしてみれば異様な光景かも知れないが、近所の人達はもう気にもしていない様子だった。







その林檎はリンファの家の裏庭に植えた木から採れたもので、虞美人(ぐびじん)という名の品種だった。





その林檎は甘みが強く、よく「甘ったるい」などと言われた。


嗜好がはっきりとわかれる味で、甘いから特に男の人には好まれない。


買っていくのは女の人か母親にねだる子供くらいで、いつも店先で山盛りの状態のまま売れ残っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る