ベルトコンベア
今西浩己
第1話 ベルトコンベア
高校3年の秋になるとみんな受験モードで嫌になる。もっと気楽にしたらいいのに。受験も大切だろうけど、高3の青春も二度とやってこないってことわかってるのかな?
最近は茜や友香たちとカラオケにすら行けてない。高1の頃なんかは三人で毎日まねきねこに通ってたのに。ポイントも信じられないくらい貯まってたのに。今では有効期限も過ぎちゃって使い物にならない。
二人とも国立大学を目指しているらしい。バカな私でも聞いたことのあるような大学。すげーとはなるけど、正直どれだけすごいのかよくわかんない。
そもそもどこの大学のどの学部に行きたいなんてみんないつ思うのだろう。自分が何を勉強したいなんてあるの?何をするか以前に、勉強したくないと思ってる私は論外ってこと?
はいはい。わかりました。バカで何の取り柄もない奴は大人しく就職しておきますよ。へいへい。でもやりたい仕事なんてないしな。とりあえず選べる中で給料のいいところにしておくか。あと休みもちゃんとあって、もちろんブラックじゃないところ。
いやーでも、さすがに専門大学くらいは行っといた方がいいのかな。今どき高卒は厳しいか。正直まだ遊びたいし。卒業してすぐ社会人はさすがにしんどい。
うん、そうしよう。専門学校に行こう。それだったら受験勉強はほどほどでいいし、最低二年はまだ遊ぶことができる。
でも待てよ。専門学校って何か専門的なことを学ぶところなんじゃね?いやいや、だから学びたいことなんてないって言ってるじゃん。
勉強したくない奴が最終的に辿り着いた場所が専門的に何かを学ぶ場所ってどういうこと?進路なんて考えてたら意味わかんな過ぎて頭がおかしくなりそう。
あーもう嫁ぎてぇ。イケメン金持ちと結婚して養ってもらいてぇー。吉沢亮に出会えるマッチングアプリないかな?
勉強もせず、そんなどうしようないことばかり考える。こうして今日も無駄に一日を消費する。
「あ~あ。せっかく今日は18歳の誕生日だったのに」
18歳の誕生日のお祝いLINEの数はいつもより人数も文量も少なかった。みんな受験前で忙しいのだろう。友達と誕生日パーティー!フォーーー!!!なんて展開にはならず、今年は大人しく家族と家で過ごした。
それは想像していたことだから全然いいんだけど、想像と少し違うことがあった。
それは18になっても自分が何も変わらないことだ。世間一般では18歳で成人と言われているけど、私はこどものままだった。おとなになるってどうするんだろう?いつか私はおとなになるのかな。
まあこんなことを考えていたってしょうがない。明日も学校だ。早く寝よう。最近は休み時間もみんな勉強しててつまんないけど。
部屋の明かりを消して、布団に入る。お母さんが布団乾燥機をしてくれたおかげで別世界みたいに布団の中があったかい。これならすぐに寝られそうだ
そのときだった。ドーーーーーーーーン!!!!!!
大きな爆発音に耳を疑った。なに?何が起きたの?事件???
あまりの衝撃に眠気なんか消え去り、ベッドから飛び起きた。
そこに広がる光景に目を疑った。さっきまで慣れ親しんだ自分の部屋にいたはずなのに、全く違う場所に立っていた。
そこは真っさらな世界だった。自分のベッドや机、スマホも家も何もかもがなかった。それどころか建物らしい建物もないし、街にあったものを全て消し去ったかのような世界だった。
「え、なにこれ?夢?どういうこと?」
動揺しながらも辺りを見渡す。すると、視線の先に何か黒く大きなものが目に入った。あれはなんだろう?音を立てながらどうやら動いているようだった。生きている感じはしない。機械か何かなのか?
恐る恐る近づいてみる。それ以外に何もないのだからそうするしかなかった。夢なら夢でいいいけど、これはどういう深層心理なの?未来への不安的な?起きたらすぐスマホで調べよ。
近づいていくとその正体はハッキリとわかった。見たことがあるものだった。でも自分が知っているものとはなんというか何もかもが別次元だった。
そこには地平線の彼方まで続いている大きな大きなベルトコンベアが流れていた。
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