【セーブ/ロード】で死に覚え無双! ~え?二人で全部覚えて全部対処すれば魔王討伐も楽勝ですよね?~

月詠

第0話【セーブ/ロード】


 ──【セーブ】。


 踏み潰したはずの勇者が、何故か次の瞬間には眼の前にいる。確かに自分はソイツの死体を作って肉塊に変えたはずなのに。そいつと全く同じ顔のやつが目の前に立っている。

 そしてさっきまで効いてたはずの攻撃を防いでくる。

 オマケに全く当たらないときた。どうなってやがるふざけるな。声をあげる間もなくソイツはブン殴られて消し飛んだ。


 ──【ロード】


 炎で焼いたはずなのに。

 氷漬けにして砕いたはずなのに。

 毒で肌を爛れさせて内側から融かしたはずなのに。

 岩で砕いたはずなのに。奈落に落としたはずなのに。串刺しにしたはずなのに。腸ぶちまけたはずなのに。嬲り殺しにしたはずなのに。×××したはずなのに。心をへし折ったはずなのに。


「はあ、全く。無茶をしないでください勇者様。あなたの命は無限ですが、時間は有限なんですから」

「ごめんごめん、シルヴィア。つい試したくなっちゃってさあ」


 なんでこいつらはお互い当然のように笑いながら、こっちに向かって来るんだ。

 突撃する勇者と呼ばれるバケモノを剣で切り裂いて真っ二つにしてやったはずなのに、


 ──【セーブ】


「ふざけるな」


 なんなんだ。なんでお前は生きている。

 ふざけるのも大概にしろ。理不尽もいい加減にしろ。蘇って蘇って何度も何度も何度も何度も殺し続けてもまだ立ちはだかるのか冗談じゃない。


「ふざけるな、なんなんだお前はァ!」


 ──その言葉に、勇者は燃えるような髪を揺らしながら笑って答えた。


「勇者だよ。ヒトを救う、すっごく強い存在」


 それが、魔物が見た最後の笑顔だった。

 こんな真似をしでかしながら蹂躙する勇者と呼ばれたバケモノにしては、随分とまぁ雲一つない晴れやかな笑みだった。

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