色んな友達2

「突発的な事故であったといえ、アカデミーに責任がないとは言い切れない。今回アイゼン君が頑張ってくれたということでアカデミーが保有する霊薬を君にお礼代わりにあげようと考えている」


「霊薬を!?」


「トモナリすごいじゃん!」


 みんながざわつく。

 霊薬とはレベルやトレーニング関係なく能力値を上げてくれる効果を持つ秘薬のことである。


 魔法職でなければ上がりにくい魔力も上げてくれたりするもので、ゲート攻略の報酬や貴重な素材を錬金術師などの職業の人が加工してようやく作れるとても貴重なものになる。

 覚醒者の間では高値で取引されていてトモナリも回帰前に霊薬を口にしたことなんてない。


 そんなものをアカデミーで保有していて生徒であるトモナリにくれるなんて太っ腹もいいところだ。

 霊薬をもらえるのはありがたい。


 レベルアップとトレーニングだけでは能力値を上げ切ることはできない。

 一個の霊薬で上げられる量など高が知れているけれど能力値一つの差が戦いを分ける場面だってあり得るかもしれない。


 いつもは冷静なトモナリの目が輝いているのを見てマサヨシは笑う。


「みなもアイゼン君にあまり迷惑をかけないうちに戻るのだぞ」


 マサヨシは最後にヒカリの頭にポンと手を乗せて部屋を出ていった。


「霊薬があるともっとお前と差がついちゃうな……なあ、なんか秘訣あんのか?」


「あるよ」


「そーだよなぁ、そんな都合よく……ってあるのか!?」


 何気なくした質問だった。

 強くなるのにレベルアップ以外の方法が基本的にはないとみんなは思っている。


 ただトモナリは少しなら強くなれる方法を知っている。

 病室にいたみんなが目の色を変えてトモナリを見る。


「教えてやってもいいけど結構大変だぞ?」


「……教えてくれ。大変でもなんでもやってみせるから」


 悔しい思いを忘れない。

 誰かを守るために覚醒者になったのに誰かに守られてばかりでは嫌だとユウトは思った。


「みんなは……」


「そんな秘訣あるなんてずるい! 私も強くなりたい!」


「やる」


「……まあ、強くなれるなら僕も興味あるよ」


 ミズキたちもやる気に満ち溢れている。


「んじゃ俺が退院したらやってみようか」


「アレをやるのだな?」


「そうだよ」


 ヒカリはリンゴの芯のところまでボリボリと食べてしまった。

 トモナリが何をしようとしているのか、ヒカリには分かっている。


「ふっふっふっ〜、このヒカリが手取り足取り教えてやるのだ!」


 ーーーーー


 次の日マサヨシが霊薬を持ってきた。

 手のひらサイズの小さい箱をトモナリの手に乗せて、忙しいからとマサヨシはさっさと行ってしまった。


 トモナリが箱を開けてみると中には霊薬が入っていた。


「肉団子みたいだな」


 ヒカリが霊薬を爪でツンツンとつつく。

 大きめな肉団子ぐらいの大きさの丸い形をしていて見た目には黒っぽくて美味しそうとは言えない。


 霊薬にも種類がある。

 そのまま食べられるような植物タイプのものあれば人工的に加工した薬タイプのものもある。


 薬タイプも錠剤のようなものや液体、今トモナリが持っている丸薬のようなものまで様々なのだ。


「トモナリ? 何するのだ?」


 トモナリはサイドテーブルに置いてあった小刀に手を伸ばした。


「ト、トモナリ!?」

 

 ゴブリンキングとの戦いでも命を救ってくれた小刀をスラリと抜くとトモナリは霊薬を真っ二つに切断した。


「な、何してるのだ!?」


 トモナリのことを全部わかっているヒカリでもトモナリがどうしてこんなことをしているのか理解できなかった。


「ほらよ、ヒカリ」


「トモナリ……」


 トモナリは半分に割った霊薬の片割れをヒカリに渡した。


「お前のおかげで生き残れたからな」


 今回ゴブリンキングから生き残れたのはヒカリのおかげも大きい。

 ヒカリがいなかったらゴブリンキングに捻り潰されてしまっていたことだろう。


 トモナリが頑張ったからと霊薬をもらったけれどそれならばヒカリも霊薬をもらう権利がある。

 だから半分こ。


 効果は半分になってしまうけどヒカリもこれで強くなれるのなら結局効果は変わらない。


「トモナリィ」


 ヒカリは感動して目をウルウルとさせている。


「ほら、食べるぞ」


「うん!」


 トモナリとヒカリは同時に霊薬を口の中に放り込んだ。

 効果を得るために口の中でしっかりと霊薬を噛み締める。


 あんまり美味しいものではない。

 なんというか体に良さそうな草を固めたような味だった。


 青臭くて苦味がある。


「むぐぐ……」


 ヒカリもあまりお味が好きでないようで手で口を押さえてなんとか食べている。


「これでも食え」


 なんとか霊薬を飲み込んだトモナリはフルーツの盛り合わせの中からブドウを手に取る。

 何粒か適当にもいでヒカリに渡す。


「不味かったのだ……」


 ちょっと涙目のヒカリはブドウの力を借りて霊薬を飲み切った。


『魔力が2増えました!

 スキル魂の契約(ドラゴン)の効果で相互作用を得られました。魔力が2増えました!』


「おっ?」


 霊薬の効果はすぐに現れた。

 魔力を上げてくれる効果があるものだったようで魔力が上がった。


 しかもそれだけではなくスキルによって繋がっているヒカリが霊薬を飲んで効果を得たのでトモナリにもその効果が得られたのである。


「そういえば相互作用があるなんて書いてあったな」


 魂の契約(ドラゴン)というスキルにはヒカリとの間に相互作用があるとも表示があった。

 どういうことなのかいまいち分からなかったけれどこういうことかと納得した。


「ふふふ、トモナリが強くなると僕も強くなった気がするんだ」


 ヒカリは口に手を当ててクスクスと笑う。

 なんだか一緒に強くなれているようでヒカリは嬉しかった。


 だけど相互作用がある以上きっとトモナリが強くなればヒカリも強くなっているのだと思った。


「そうだな……もっと強くなろう。一緒に、どこまでも」


 トモナリが頭を撫でてやるとヒカリは目を細めて気持ちよさそうにしながらブンブンと尻尾を振る。

 小さくなってもデカくても感情表現は変わらないのだなとトモナリは思う。


 焦ることはない。

 まだまだ覚醒者として始まったばかりで、トモナリには回帰前にはなかった可能性がある。


 ヒカリとなら強くなれる。

 トモナリは青臭くなった口の中をリセットしようと一つブドウを食べた。


「あーん」


「はいはい」


 食べさせてと口を大きく開けるヒカリ。

 トモナリはフッと笑ってヒカリにもブドウを食べさせてあげたのだった。


 ーーー第一章完ーーー


ーーー

後書き

ここまでお読みくださりありがとうございます。

これにて一章完結となります。


こちらの作品は第二章まだ書き終えておりますのでこのまま二話更新を続けていこうと思います。

日付的にも小説的にもキリがいいのでよければ星やレビューください!お願いします!


まだまだ作品は続きますのでよければお付き合いください。

今年もよろしくお願いします!

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