入学テスト2
試験が始まってトモナリも集中して問題を解いた。
意外と難しい問題もあったりしたが一応ちゃんと復習もしてきたので大体の問題はサラサラと解くことができた。
全試験も終わり、これで終わりかといえばそうではない。
もう一晩寮に泊まって次の日、試験の時は制服などの格好をした人も多かったのだけど今度はジャージなどの動きやすい格好をして受験生は学校にある訓練場という施設に集められた。
ある意味ではここからが本番だとも言えるとトモナリは思った。
受験番号順に並ばされた生徒たちの前に布をかぶせられた大きな箱がいくつか運ばれてくる。
「決して動かないように!」
スピーカーを通して一度注意を促す。
鬼頭アカデミーの教員たちが前に出てくると箱にかぶされていた布を取った。
布を取った後の箱を見た受験生たちの反応は様々であった。
動くなと言われたのに箱から逃げたり、悲鳴を上げたり、中には気絶してしまう受験生までいた。
箱の中にいたのはモンスターであった。
大きなネズミのようなモンスターで薬でも打たれているのか騒ぎの中でもうつろな目をして動かない。
いきなりあんなものを見せられたのでは前にいた生徒は気の毒だなとトモナリは思う。
しかしもう第二のテストは始まっている。
気を失った生徒は素早く運び出されて逃げ出した受験生には早く列に戻るように声がかかる。
それでも最前列に並んでいて戻ることを渋り続けていた受験生がいたが、その子もそのまま訓練場から出ていくことになった。
「これから君たちは覚醒者としてのモンスターと戦うことになる。冷静さを失い、自分勝手な行動を取るものは命を失う可能性が大きいだけでなく、仲間の命をも危険に晒してしまう」
教員の一人がマイクを手に第二のテストの説明を始める。
「気絶した者、冷静さを取り戻せない者、恐怖に打ち勝つことができない者は当アカデミーにふさわしくない。モンスターと関わらない人生を歩むことをおすすめする」
気絶した受験生や列に戻らなかった受験生は筆記がよかろうとこの時点で不合格となる。
「これから一人ずつ前に出てモンスターを傷つけてもらう。最後にはモンスターを殺して覚醒してもらうことになる」
鬼頭アカデミーには覚醒者としての授業がある。
つまりは鬼頭アカデミーに入ると覚醒させてもらえるのだが、鬼頭アカデミーは覚醒作業すら入学のためのテストとして利用する。
気質としてどうしてもモンスターと戦うことに向かない人が存在してしまうことはしょうがない。
ただそんな人が鬼頭アカデミーに入ったところで覚醒者としての授業にはついていけない。
あるいは自分勝手な振る舞いや冷静さを保てない人は戦いの最中にも同じく適切でない行動をとって周りを巻き込むことがある。
ここで覚醒させる作業と同時に覚醒者に向かない人の振り分けを行なっているのだ。
受験生が呼ばれていく。
複数の受験生がそれぞれの箱の前に立ち、長めの槍を渡される。
「あれで突けってのか」
想像していたよりも優しいやり方だなとトモナリは思った。
トモナリが覚醒した時は複数人で固まって引率の覚醒者に連れていかれて死にかけのモンスターにナイフを突き立てさせられた。
あの時に比べれば安全だしモンスターが来るかもしれないなんて恐怖感を感じずに済む。
ただ他の受験者たちにとってはいきなりのことで顔を青くしている人の方が遥かに多かった。
「受験番号146番……は覚醒済みですね。こちらの係員についていってください」
トモナリの番号が呼ばれた。
ただトモナリはもうすでに覚醒していてネズミを槍で刺す必要なんてない。
言われた通りに係員についていく。
「中に入ったら受験番号と名前をお伝え願います」
面接会場と書かれた紙が貼られた部屋の前でトモナリと係員は立ち止まった。
覚醒している人は何をするのか。
簡単に言えば貼ってある紙の通り面接である。
ノックをするとどうぞと声がかかるので中に入る。
「受験番号146番。愛染寅成です」
部屋には三人の面接官がいた。
その中で真ん中にいる頬に大きな傷のある中年の男性が鬼頭アカデミーの学長である鬼頭正義であった。
強い魔力を感じてトモナリは息を呑む。
マサヨシは鬼頭アカデミーを興す前は第一線で活躍する覚醒者だった。
事情によって第一線で戦う覚醒者としては引退したもののその力はいまだに健在である。
「愛染寅成君だね? そう固くならなくてもいいよ。少し質問するだけだから」
トモナリから見て右に座っている男性が爽やかな笑みを浮かべて話し出す。
「僕は宗方祐樹(ムナカタユウキ)、よろしくね。君が覚醒した経緯を教えてもらっていいかな?」
「分かりました。あれは……」
トモナリは自分が覚醒することになった廃校でのゲートのことを話した。
通報だけするつもりだったけれど女の子を助けるためにモンスターと軽く戦うことになったことを簡単に説明する。
「なるほど。人を救うために行動したんだね。それはとても素晴らしいことです」
すでに何かの資料があるようでムナカタはペラペラと何かをめくって見ながら話を聞いていた。
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