俺だけがエロ漫画家だと知っているクラスメートのツンデレ赤髪美少女にサインを見返りに勉強を教えることになったが、サインだけでは釣り合わないと言われてから日に日に彼女のお礼が過激になっている件
梅田 蒼理
第1話 赤星緋音は勉強が出来ない
「何読んでるのお姉ちゃん?」
「あっ、斗真くんも一緒に読む?」
「うん。読む」
「じゃあ一緒に読もっか、姉ショタ(エロ漫画)」
ーーー
「おい、起きろ佐藤」
「へ?」
目を開くと俺、佐藤斗真の頭に担任(二年二組)の数学教師、立夏ちゃんの教務手帳が置いてあった。
思い出せないが……いや、思い出す必要はない夢だった気もするが……どうやら俺は寝てしまっていたみたいである。
「今からテスト返しだというのに居眠りとは随分と余裕だな佐藤」
「あっ、立夏ちゃん。俺、今回のテスト結構間違えてたと思うんだけどさ……贔屓目で採点してくれてたら嬉しいな。なんて……」
「適当に採点したからまた修正があるだろうが、佐藤の答案だけは私が血眼になってミスを探したからな。しっかり減点してやったぞ」
「立夏ちゃん……?」
とても良い笑顔で立夏ちゃんは微笑んだ。
教え子のミスを喜ぶとは教師としてどうなんだろうか……
「━━よし、それじゃあ返すぞ赤星」
「はい」
それは思わず目を奪われるほどの美貌であった。
出席番号一番。赤星緋音(アカホシアカネ)は凛々しい返事をすると、美しい赤髪をたなびかせながら俺の前を通りすぎていった。
「よく頑張ったな赤星」
「ありがとうございます夏目先生」
赤星緋音は頭を下げて答案を折りたたむと堂々と自分の席へと戻っていく。
彼女の鮮やかな朱色の瞳はまるでここではないどこかを見ているようであった。
きっと俺のような凡人とは見ている世界が違うのだろう。
「ねぇ斗真。緋音さん凄いねー。立夏ちゃんに褒められるなんてきっと高得点だよ。美人で運動も勉強も出来るなんて羨ましいなー」
日焼けしている元気なクラスメートの女子、海江田楓(カイエダカエデ)がそう呟いた。
確かに彼女の言う通り、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能とは赤星緋音のような人間を指すのだろう。
あと、あえて言うことでもないだろうが、赤星緋音の太ももは太く柔らかくそれでいて引き締まっていた。
もっと言えば赤星緋音の胸がとてつもなく大きく柔らかくそれでいてハリがあり、それはもはや芸術品の域であった。
「そうだな……さてと……寝るか……━━うぶ」
「見て50点! 楓にしては凄くない!?」
せっかく二度寝出来そうだった俺に楓は後ろから思いっ切りもたれかかり、テストを見せびらかしてきた。
二度寝どころか永眠するところだったが、この背中に残っている柔らかく温かい感触に免じて許してやろう。
「平均点が高いだけじゃないか?」
「えーそんなことないよー」
「あ、おはよう佐藤。今回は珍しく起きてるんだね」
俺より出席番号が三つ前の眼鏡をかけたクラスメートの男、木下春樹(キノシタハルキ)が話し掛けてきた。
見た目通りの優等生の眼鏡である。
こいつに関しては何も言うことはない。
「男に目覚めのあいさつされても嬉しくねえよ」
「そんなこと言われてもなぁ……毎回テスト返しで佐藤を起こしにいかされる僕の身にもなってほしいものだね。感謝の一つぐらいあってもいいと思うんだけどな」
「あ、木下、何点だった? いっせいので勝負ね」
「いいよ海江田さん。94点」
「50点! え? 楓の負け……? 今回は勝ったと思ったのになー……おめでと木下……」
何でそんな本気で落ち込めるんだろうか……?
むしろよく50点で勝てると思ったな……50点とか下手したら平均点もないだろ……
「ありがとう海江田さん……でも、僕は今回は駄目そうかな……上山くんには負けてたし、千早さんや八代さんにも負けてそうだし、赤星さんなんてたぶん100点だからね……」
「何で赤星さんが100点だって知ってるの?」
「いや、ちゃんと見たわけじゃないんだけどさ。テストがうっすら透けてて10って見えたんだ」
「木下……そういう変態の視線は案外本人にバレてるからな……気をつけろよ」
「人聞きの悪いな佐藤……まあ、人のテストをチラチラ見るのは褒められたことではないけどね……でも、僕は変態の佐藤みたいに胸や脚を見ていたわけじゃないよ」
「は? どういうことなの?」
楓が一瞬、実家で声が低そうなドスの効いた声を出した。
俺の額から冷や汗が垂れる。
「それがね木下さん。佐藤が赤星さんの胸や脚をまるで舐めるように……」
「俺たち親友だろ。お前のおはようが俺の生きる糧だ。ありがとう木下」
「えぇ……気持ち悪いなぁ佐藤……」
木下は心底嫌そうに俺を見た。
お前が感謝してほしいって言ったんだろ……
せっかく感謝を伝えてやったらこれである。
「おい、佐藤早く来い」
「ごめん立夏ちゃん」
俺は立夏ちゃんに呼ばれて教壇へと駆けていった。
学年順位が良ければ母さんが好きなものを買ってくれることになっている。
良い点数がとれていたらいいのだが……
「喜べ佐藤。五問も間違ってたぞ。今日は晩酌だ。と、言いたいところだが、間違えてるの場所が奇跡的でな……本当はもっと点数を下げてやりたかったところだったが、他の先生との兼ね合いもあって……くっ……」
立夏ちゃんは不服そうに俺にテストを押し付けた。
そんなに俺の点数を下げられなかったのが悔しいのかこの教師……
━━点数を見た俺は肩を落とし、トボトボと自分の椅子に戻る。
「何点だった?」
「言わないと駄目か楓……?」
「大丈夫だよ斗真。楓は笑ったりしないから」
楓は満面の笑顔でそう口にした。
そんな顔を見せておいてよく笑わないなんて言えるものである。
「じゃあ言うぞ……95点だ!」
「え?」
テスト見せびらかすと楓は口を開けて放心していた。
あえて落ち込んだように見せた甲斐があるというものだ。
ほら笑えよ楓。
「酷い……楓は本気で心配してたんだからね」
「嘘つくな。ニッコニコだったろ楓」
「よくも……糠喜びさせたな……喰らえー」
楓はポコポコと俺を殴りつける。
一見可愛らしいがインパクトの瞬間に拳に力を込めて裏拳を当てられてるせいかわりと痛い。
楓の性格の悪さが如実に現れたパンチと言えるだろう。
「ちょっと待て……暴力反対だ楓……」
「いけ海江田。佐藤をボコボコにしてしまえー」
「「海江田(さん)、頑張れー!」」
楓といい、それを応援してる立夏ちゃんやクラスの奴らといい、まったく酷い民度である……
「いけー海江田さん。顔面と股間を狙うんだ。そこだー。ぶっ殺せー。よくも僕よりいい点取りやがったな佐藤!」
ちなみに一番熱心を野次を飛ばしていたのは木下だった。
流石は俺の親友だ。
ーーー
「見て母さん。学年18位だったよ」
「あらー凄いじゃない」
俺の母親は順位表を見せると嬉しそうに微笑んだ。
学年順位が良いければ母さんが好きなものを買ってくれることになっているが、具体的には30位以内に入るのが条件である。
順位が悪かったら木下のを加工するつもりだったが手間が省けて助かった。
「どうだい母さん? 自慢の息子だろ?」
「はいはい。自慢の息子よ。それで何が欲しいの?」
「それじゃあ楽前天の最新刊を頼むよ。あっ、また間違って楽後天買っちゃ駄目だよ。母さんはおっちょこちょいだからなぁ……この前なんて野獣天を買ってきただろ?」
「あの……斗真……毎回良い順位取るたび、ジャソプ買ってきてお母さん。あっ、間違ってマガジソ買ってきちゃ駄目だよ。前なんてサソデー買ってきたよね。みたいな感じでエロ漫画雑誌頼むのやめてくれないかしら……?」
「え? 駄目なの?」
「駄目っていうか……ほら、もっと高いものでもいいのよ……せっかくだし別のものにしたら?」
「いや、そのままでいいよ。それじゃあ、追加で野獣天も買っといて」
「分かったわ……野獣天、良かったのね……(いったいどこで育て方を間違えたのかしら……?)」
「斗真くん。そこのエロ漫画取ってぇー」
俺の姉、佐藤聡美(サトウサトミ)は下着だけのだらしない格好で俺を呼びかけた。
エロ漫画ぐらい自分で取ってほしいものである。
「はい。お姉ちゃん」
「ありがとー、斗真くん。一緒に見る? あっ……ねっ……ショっ……タあああん!」
「ごめんお姉ちゃん。俺、今から宿題するんだ」
「そう残念……また一緒に姉ショタ見ようね斗真くん。斗真くんが望むならいつもでもリアル姉ショタしても良いんだよ……? でも、ショタって歳でももうないか。じゃあリアル近親相……」
最後なんて言ってたのだろうか?
宿題なんてまったくするつもりはなかったが、何故か俺の体は二階へと上がっていた。
お姉ちゃんと話しているとこういうことがよく起こるがどうして何だろうか?
まあ、自分の部屋来てしまったし宿題をすることにしよう。
「━━あれ? ない……」
数学のテストがどこを探してもなかった。
そういえば学年順位9位でホッとしていた木下に嫌がらせで見せにいったがその時か……
どこを間違ったのか正確に覚えていないので学校に行くしかないだろう……
しかし、改めて三角の1点減点が五問とか嫌がらせみたいだな……
「……━━あなたのせいよ聡美! 斗真を母親にエロ漫画の購入を頼む変態にした責任を取りなさい!」
「責任? 勿論、私は斗真と一生を添い遂げるつもりよ。姉と弟が結ばれるなんて当然のことよね」
「身内に興奮するなこの変態が!」
家を出ようとすると母さんとお姉ちゃんが何やら言い争っていた。
喧嘩を止めようと思ったが俺の体は学校へと全速力でかけていった。
ーーー
「あれ? テストがないわ……はぁ……締め切りも近いのにテスト直しなんてやってられないわよ……」
俺が教室に入ろうとするとそこにはため息をつく赤星緋音の姿があった。
彼女も俺のように何か忘れたのだろうか?
教卓が目の前にある、立夏ちゃんが用意した俺の特等席と違い、彼女の席は物語の主人公がよく座っている窓側の一番後にあった。
暗い表情だったが、彼女の美しい容姿と風に揺られキラリと輝く赤髪が相まって、とても絵になっていた。
「赤星さん。プリント落ちてるけどこれ赤星さんの?」
赤星緋音の足元にはプリントが一枚落ちていた。
ちなみに気づいたのはただの偶然である。
断じてスカートが風でめくれないと眺めていたらプリントが目についたわけではない。
「確かあなたはクラスメートの佐藤くん……? ちょっと、それ……」
「え? 10点……?」
それはあまりにも酷い点数の数学のテストであった。
見間違いかと思って何度か見返したが名前の欄には赤星緋音と無駄に達筆で書かれていた。
「見たわね……」
「えっと……意外と勉強苦手なんだね赤星さん……」
「返しなさい……━━きゃあ!」
俺からテスト取ろうとした赤星緋音は机に足を引っかけてすっ転がった。
衝撃で机にかけられていた彼女の鞄が吹っ飛んで俺の顔ぶつかり、留め具が外れたのか中の物が散らばった。
「痛た……」
「待って……見ないでー!」
「え? これエロ漫画の原稿……?」
赤星緋音がバラまいた紙には神が宿っていた。
それは周りに落ちている32点の国語テストと27点の英語のテストなんて気にならないほどの出来だった。
「はは……終わったわね、私……」
「神ぃぃぃ……」
テストとエロ漫画を壮大にバラまいた赤星緋音は膝から崩れ落ち乾いた笑いを見せた。
彼女のエロ漫画に魅せられた俺はただそれらを見つめることしか出来なかった。
俺だけがエロ漫画家だと知っているクラスメートのツンデレ赤髪美少女にサインを見返りに勉強を教えることになったが、サインだけでは釣り合わないと言われてから日に日に彼女のお礼が過激になっている件 梅田 蒼理 @Umeda_Aori
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