第42話 妖精さんと、いざパーティー会場へ
「美味しそうなものいっぱいあるです〜」
「食べちゃだめですよ、これ全部お貴族様たちのものですから。」
厨房からチョコ餅を持って晩餐会の会場にやってまいりました。
貴族社会から離れて3年、皇宮で働いたのが1年前(厨房と宿舎以外に立ち入ったことはない)
デビュタント前に貴族社会を離れてしまったので、パーティー会場というものには初めて入るのですが……
こんなに煌びやかなものなのですね。
会場が煌びやかなのはもちろん。
参加者の身に纏うドレスやタキシードが輝いて見えて眩しいです。
私が子爵令嬢だった時に着ていたドレスよりももっと上等なものしかありません。
デビュタント……参加できなかったのは不幸中の幸いかもしれません。
それに、今日は世界各国の要人が来ているので、肌の色も皆違い、その上ドレスと一口に行っても民族衣装で個性豊かでみているだけで面白いです。
それに……厨房でもご一緒していたので知っていましたが、世界各国からいろんな料理人がいらっしゃいます。
綺麗に盛り付けられたお皿が、綺麗に並べられ、巨大なバイキング会場になっています。
お腹空きましたね。
中華っぽい料理まで出るんですね…はぁいい匂い。
久しぶりにこの匂い嗅ぎますね…青椒肉絲?中華飯?
いいな…久しぶりに食べたくなってきた。
インドに該当する国とかきてないですかね…そしたらカレーたべれるんだけどな…。
前世でカレーを作るのは簡単な部類だったのですが、ルーが存在しないこの世界だと、一気に難易度上がるんですよね…まずスパイス揃わないし。
コメくれた国は…やっぱ刺身とかなのかな……ここからでは見えません。
厨房戻ってからそれとなく声をかけてみましょうか……
あぁ、外国語は習得していないんでした、コミュニケーションは無理そうです。
いいな…今日の晩餐会私も参加したい…
「シェフ…今日賄いなりなんなりで、貰えたりしませんかね」
「シェフが後で余ったらくれると言ってました!」
私の独り言を聞いた妖精は、私のエプロンのポケットから顔をこんにちわさせてそう答えてくれました。
「本当ですか!?あ…でも匂いが馬車に…」
「よじげんたっぱぁ!」
「こんなこともあろうかと複数ご準備」
「匂い漏れ安心」
「どうもご親切に」
貴族がいっぱいいる会場の中で、貧乏根性がちょっと恥ずかしいです。
しかしその妖精に対して返事をして、あることに気がつきました。
こんなに煌びやかな会場なのに何か足りないと思ったのです。
そう……妖精がいないのです。
「あなた方、会場には来ないのですね。」
「あい」
「厨房にはあんなに溢れるほどいるのに、どうしてこないのですか?」
まぁ、厳密に言えばポケット一つにつき1人ずつ、頭の帽子の中にも一人いるので、3人はいるわけですが、その3人もがっつり隠れています。
「希望者少なかった」
「お貴族のパーティーは特に興味がなく」
「こういうの好きそうなのに、意外ですね」
「綺麗なものは特に興味ないので」
「自分で出せますから。」
そういえば、そういう理由で宝石やお金に興味がないんでしたっけ?
確かに、こんな豪華な会場に来ても彼らは一切興味を示さない様子からして、その言い分に偽りはないようです。
改めて、独特な感性ですね。
「あと、リスクが」
「お貴族にバレると実験されそうで」
そんな経験でもしたんでしょうかね。
街中で溢れている方が、ヤブ医者に見つかってイタズラされそうですけれども
「あと、オーナーが来てる頃は、お貴族たちには内緒なので」
「僕らいるとバレてまう」
なるほど、彼らなりに私のことを気遣ってくれたわけですか。
でも、彼らがいるから私がいるとも限らないような
「妖精がオーナーのお菓子屋さん手伝ってるのは有名ですから」
「そりゃそうか」
まぁ、チョコ餅の時点でけっこう危ないので、意味がない気もしますが。
「ところで、このお菓子どこ持って行くです?」
「そうですね……デザートコーナーか、うちの国のテーブルのところだと思うのですが……皆目検討つきませんね。誰かに聞かないと……」
私は周りをキョロキョロと見回して、係の人間を探しました。
しかしどこもかしこも、煌びやかな人間しかいませんん。
困りましたね……
「オーナー!太客いますですよ!」
「え?」
そう言われて私は顔を上げました。
そこには要人と談笑している殿下が確かにいました。
その表情は、笑顔なのですが、普段うちの店に来て自信満々だったりチョコ餅を所望している時の、少年っぽい笑顔とは全く違います。
よそ行き用の社交辞令の大人向け笑顔。
へー、こうやってみると、ちゃんと皇子様やってるんですね、あの殿下。
普段あんなやんちゃ坊主みたいな口調なのに。
意外にちゃんと威厳がある。
もちろんないと困るのですが。
しかし、殿下がいるからなんだというのでしょう……まさか
「殿下に置き場所聞けっていうのですか?」
「知り合いに聞くのが一番では?」
「バカ言っちゃいけませんよ!どれだけ身分の高い人だと……!」
「何をしている?」
「ぎゃっ!!」
そんなことはしてはいけないという説教中に、殿下が来てしまいました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。