魔王様の、鍋事件。きっと、餅もウインナーも入れる派

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 異世界も、「鍋」が人気の季節になりまして。魔王様が、おかしな行動をとるようになりまして。ま、魔王様~!

 魔王様の、鍋事件。

 写真雑誌で、魔王様が謎の家に出入りする姿がスクープされた。

 それからは、魔王様が部下に面白いことを言うようになる。

 「部下よ」

 「はっ!」

 「鍋に、モチとか入れる派?ウインナーソーセージも、入れる派?」

 「…はい?」

 魔王様が、変。

 「俺も、鍋のように有名になりたい」

 「ま、魔王様?」

 「鍋は良い」

 部下たち、大心配。

 「鍋のように有名…。魔王様は、すでに有名なお方では?」

 「それが、いかんのだ」

 有名になると、雑誌記者に追いかけられて困ると言いたいらしい。

 「あれは、しつこい。モチのように、しつこく底にへばりつく…」

 「ま、魔王様~!」

 そのとき部下は、魔王様に鍋関係のスクープ写真が撮られていたのを思い出す。

 魔王様は、鍋にどんな情熱を燃やしているんだ?

 「あの写真…」

 「何か言ったか、部下よ?」

 が、言えない。

 「いえ!何も、申してはおりません」

 魔王様と鍋の、関係は?

 魔王様は、どんな家に出入りする日々を送っていたんだろう?

 とにかく、気になる部下。

 まさか…。

 恋人の家?

 そんな、まさか。

 じゃあ、魔王様はどこへ?

 「ねえ、俺の部下たち~?」

 「は、はい!」

 「鍋に入れるのは、うどん?ラーメン?」

 鍋にこだわり続ける、魔王様。

 「鍋、鍋~!」

 写真雑誌では、また、魔王様が謎の家に出入りする姿がスクープされた。

 そんなとき、魔王城で魔王様の誕生パーティーがおこなわれることに。

 「チャンス!」

 部下の 1人が、魔王様に聞く。

 「…魔王様?魔王様は、どういう家に出入りをくり返してらっしゃるのです?」

 勇気、あるね~。

 良く聞いたと、聞き耳を立てる他の部下たち。

 魔王様は、美味しい酒を飲んでご満悦。

 「ふいい…その家か?」

 「はい!」

 「鍋を売っている店だよ」

 鍋?

 「さすがは、魔王様!」

 「寒い時期の流行には、敏感ですね!」

 「モチにウインナー…、気になるわけですね!」

 すると、魔王様がお気に入りだという鍋を取り出した。

 「ま、魔王様は、鍋料理に使う具を買っていたのではないのですか?」

「ちがうけど」

 「…」

 「あの店は、良い鍋を売っているんだ」

 「…」

 「皆?この鍋どう?」

ま、魔王様~!

「鍋!」

 「鍋!」

 「魔王様が、鍋」

 「鍋だけを買った!」

今、異世界が変です。

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