第3話

 男はその日雀荘にいた。健全な雀荘ではない。

「ロン、七対子。」

 男があがると点数が動く。一局が終わると紙幣も動く。

「ツモ、対々和。ロン、四暗刻。ツモ、清老頭。ツモ、大三元。」

 男はその後も相手を勝ち続け、気づいたら財布がいっぱいになっていた。これも例の新聞のおかげである。

 新聞に【今日の要注意面子は順子】と書いてあったので、試しにやってきたというわけだ。要注意○○を選択しなければ損はしない。損失がなければ利益のみが得られるという事実に男は気が付いたようだった。


 数日後、【今日の要注意通貨はゴン】という新聞が届いた。男がFXトレードでゴンを売ると、その日のうちに通貨は急落。なんでも大統領が病気で倒れてしまったらしい。いい感じのところで買い戻して利益を得ることに成功した。結構な額である。


 男の資産はさらに増える。またある日【今日の要注意ナンバーは丸みのある数字】とあったので、数字選択式のくじを1,4,7を中心に買い漁ったら見事当選したのである。

 だが、当たったのは当日結果発表となる種類のみで一等は100万円である。何億円と当選するものは後日しっかりとはずれていた。どうやら新聞の内容は当日中に結果を伴うものでなければいけないらしい。

 とはいえ不定期ではあるものの確実に儲かることがあるのである。男は新聞を生活の中心に捉えるようになっていった。どこの新聞社が発行しているのか、なぜ男にだけ届くのか、誰が届けに来るのかなどの些細なことは最早男にとってどうでもいいことであった。

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