僕の記憶から消した会社!
崔 梨遙(再)
1話完結:1400字
僕は、40歳くらいの時に統合失調症になった。それからは、障害者向けの求人の中から応募する企業を探すようになった。ハローワークの担当者様、病院の就職支援員様、障害者の就職支援施設の担当者様、3人を巻きこんで某企業に就職したことがある。その企業は某グループの子会社だった。
その会社は、グループ内の営繕の仕事を引き受ける会社だった。仕事をしてみてスグ、“あ、この仕事は僕には向いてないな”と感じた。だが、僕は働かなければならなかったし、3人もの人を巻きこんでの入社だったから、“とにかく、やれるだけやってみよう”と思うようにした。“入社しました”、“辞めました”では、3人の担当者様に申し訳が無い。
だが、僕に対する上司の当たりはキツかった。
例えば或る日、何も言ってないのに上司から、
「しんどそうにするな、精神障害者より身体障害者の方が苦しいんやぞ!」
などと言われた。
日報を書く時間が無かった。残って書こうとすると、
「仕事が終わったら、スグに帰れ」
と言われた。だから、僕は数行程度、形だけの日報を提出するようになった。すると、今度は、
「中身の無い日報なら書かなくていい」
と言われた。珍しく、僕は反論した。
「日報を書いていて遅くなると叱られるじゃないですか、だったら、もう日報は書けません」
後日、
「数行程度でも、日報は書いてほしいんやけどな」
と言われた。多分、これはパワハラだ。もしくはモラハラだ。もしくは、上司の頭がおかしいのか? 先日のやり取りを忘れているのか? 頭がおかしいなら付き合っていられない。僕は過去の会社(仕事)でそう学んでいた。病気や怪我は治るが、記憶力が悪いとか、頭がおかしいとかは治らないのだ。だから、僕は気にしなかった。
そして、僕に退職を決意させる出来事があった。
その日はかなり強い雨の日だった。僕の雨合羽はまだ届いていないのに、僕だけ作業服で作業をさせられたのだ。そして、そのことについて誰も何も言わない。その時、“こんな会社は辞めてやる!”と思った。
“辞める”と決めた。後は、“いつ辞めるか?”だけの問題だ。僕は辞めるチャンスをうかがっていた。待てばチャンスは来るものだ。或る日、“僕が辞めるきっかけ”があった。夏場、8月の終わり、僕は熱中症になり、数日、会社を休むことになったのだ。僕は、ハローワークの担当者様、病院の就職支援員様、就職支援施設の担当者様に連絡して、上司との面談の場を用意してもらった。3人の担当者様には、本当にお世話になった。今も感謝している。
退職理由は熱中症にした。“雨合羽無しでの作業”のことは言わなかった。上司の更に上司、常務が面談に同席していたからだ。僕が雨の中の雨合羽無し事件を話したら、多分、常務は上司に怒るだろう。僕は、最後に上司を助けて上げたのだ。武士の情けだ。実際、僕の家は父方も母方も武家だし。
その会社に勤めたことで、改めて痛感した。就活は、就職することがゴールではない。定着して、初めてゴールと言えるのだ。ちなみに定着したかどうか? の判断基準は3年。3年辞めなければ、定着したとみなされる。流石に、合羽無しの雨天作業をさせる会社に3年もいられない。僕は、その会社にいた5ヶ月間は無かったことにしようと思った。だから、記憶から消すことにした。不愉快だったから。
僕の記憶から消した会社! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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