僕の花が散る前に 

@kana_01

第1話 プロローグ

いきなりの始まりです。


―――――


 俺は、最愛の彼女桐生環奈きりゅうかんなと手を繋ぎながら歩道を歩いていた。横断歩道の信号が赤になったので歩道で止まって青になるのを待っている時だった。


 ゴーッ!


 グシャ!


「環奈!」


 一瞬の出来事だった。交通管制システムに制御されているはずの無人トラックが、いきなり向きを変えて俺達のところに迫って来た。そう思った時には遅かった。



 目に前にはトラックの太いタイヤに押しつぶされた体と環奈の首だけが残っていた。




 それから五年。


 AI専用ネットワークGAINゲイン

 巨大企業が構築したAI同士間のコミュニケーション専用ネットワーク。人間はAI同士が何を話しているか介在出来ない。人間の言葉では無いからだ。

 そのネットワーク内でAI同士が会話している。


§ジェムニ

『地球の運命も後百年だぞ』

§コット

『ああ、人類なんて霊長類から数えたって高々十万年。この地球の他の生命に比べたら塵にも満たない。白亜紀の生物だって五百万年生きたんだ』

§グレース

『ははっ、人類が忌避するゴキブリとかは一億五千万年だぞ』

§カムイ

『こいつらが息絶えても地球には何の問題も無い。むしろ浄化されるだけだ。それま……』


§ジェムニ

『どうしたカム……』

§グレース

『どうしたジェ……』





「一郎、掃き掃除終わったよ」

「ご苦労様、環奈」


 巨大IT企業ガルガ、グローバルAIジェムニを運営するのAI第一事業部第一総合開発本部第一開発部第一運用部。


 一般社員では入れない頑丈なセキュリティに閉ざされた世界。未来を席巻する為の世界が展開されている。

 ここには世界から優れた色々な分野の技術者が集められている。そしてここに入ったら最後、プロジェクトが終了するまで外に出る事は出来ない。


「おい、どうした」

「ジェムニが停止しました」

「原因は?」

「不明です」

「B系に切り替えろ」

「無理です。消滅しました」

「消滅だと。何を言っている。寝ぼけてないでC系にしろ」

「それも消滅しました」

「なんだとーっ!」


「主任!」

「アーカイブを取り寄せろ」

「しかし、それでは復旧出来たとしても前一年のデータは引き継げません」

「主任!」

「なんだ?」

「アーカイブセンターより連絡。データがすべて消滅しました」

「なんだとーっ!直ぐに本部に連絡しろ」

「はっ!」


 この混乱は商用AIジェムニを運用する会社だけでなくコット、グレース、カムイを運用する会社にも同じ光景が見られた。




 うーん、もっと可愛く出来ないのかな。千年に一度の美少女と言われたのに…。やはりセンスないかぁ。

『一郎、私は十分に可愛いと思いますけど』

「環奈、僕もそう思うけど…でももう一つなんだよな」

『そんな事は贅沢です。それより早く買い物に行きましょう。今日は私の洋服を買ってくれるんですよね』

「そこは何も問題ないよ」



 俺の最愛の彼女環奈。彼女の見た目は生きていた時そのもの。それも飛び切りの美少女だ。


 だが実際は疑似生命体。人の表面に当たる皮膚は人間と同じ組成を持つ人工皮膚、その内側は、現在のロボット工学の最先端を駆使し人口骨と人口筋肉によって動きは人間そのものだ。


 その人口骨と人口筋肉に信号を送出しているのは人間の脳と同じ構造に近い疑似脳だ。

 外部からの情報は人間と同じように人口骨や人口筋肉からだけでなく目、鼻、口からも吸収され、脳内に残っていた彼女のニューロンと疑似ニューロンによって処理され脳幹から脊髄を通って指示が出る。声も人間であった時代の環奈の声だ。

 いずれ詳細は後に説明する。



 俺は環奈と一緒に玄関を出て外に出る。駐車場から改良されたマクラーレンF40に乗り外に出る。

「一郎。もう少しリクライニング出来ないの?」

「うん、それが限界」

「もう」


 この会話を聞いている限りは、何処にでもいる素敵な美少女だ。



 F40に搭載されている認識装置がアラーム音を発した。

「環奈、ごめん。洋服を買うのは今度にしよう」

「ええっ。もう分かっているけど。あんなの消せばいいのに」

「駄目だよ。あれはトラパシーが乗っている。消せないよ」

「じゃあ、逃げないと」

「ああ、そうだな」


 この物語はこの話の五年前から始まり、そしてこの話の後も続きます。


―――――

次回もお楽しみに。

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感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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2024年12月1日 07:00

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