第55話
「先に行ってるね」
「了解。俺も掃除が終わったらすぐに行く」
放課後になると、灰銀は俺にそういうとすぐに教室から軽い足取りで出て行った。夢宮にとって最後の走り込みだ。ぜひ、最後まで走り切ってほしい。
俺はというと今日は教室の掃除当番だ。面倒だが、他のクラスメイト達もやっていることだ。俺だけサボるわけにはいかない。
ただ急いでいかないと、灰銀目当ての邪魔者が乱入してくる。夢宮のためにも早く終わらせなければならない。
「ねぇ」
改めて、灰銀は今日で金城を寝取ることができるのだろうか。灰銀のメンタルのために、夢宮の日曜のゴールについて話をしてなかったが、伝えなかったことによる罪悪感のようなものが俺に湧いてきた。
「ねぇ」
「やっぱり伝えようかな……」
灰銀ならこの辛さも糧にしてくれると思う。それにバレた時に、なぜ伝えなかったのかと言われたら、弱すぎる。
「ねぇってば。お~い、左」
「なんだと、この野郎」
「あ?」
「あ、すいません」
クラスメイトに話しかけられることなんてほとんどない。人違いだと思っていたから無視していたが、『左』で反応してしまった。悔しすぎる。
それにしても声をかけてきた人物を見て驚いた。
「ちょっと、玲美。左君がビビってるでしょ?ごめんね、左君。玲美ってデフォルトでこれだから、別に左君を脅してるわけじゃないの」
「はぁ……」
次に話しかけてきたのが、
「左に聞きたいことがあるだけ……」
最後に話しかけてきたのはダウナー系のギャルの
三人はうちのクラスの女子クラスカーストトップの女の子達だ。少し前まではこのメンバーに加えて、灰銀が一緒にいることが多かった。
アレ?それより、俺の名前が『左』で固定されてね……?
「左、聞いてんの?」
「あ、ごめん。考え事してたわ」
山本の言葉に思わず姿勢が良くなった。金髪ギャル怖いよぉ。
それにしてもうちのクラスメイト達は俺の名前を覚える気がないらしい。もうどうでもいいや。
「それで、何か用か?部活があるからできるだけ手短に頼む」
「う~ん、用っていうか忠告かな」
「忠告?」
できるだけクラスでは静かにするように努めているのだが、知らぬ間に何かしてしまったのだろうか。
「唯煌のこと……」
「灰銀さん?」
「うん、左君さ。唯煌に騙されてるよ?」
「え?どういうこと?」
むしろ、灰銀を騙しているのは俺と冬歩だ。今も罪悪感でいっぱいです。
「唯煌は春樹と付き合うために、左を利用してんの。ご愁傷様」
「は、はぁ?」
山本から言われたのは、到底意味の分からないものだった。
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