第18話
「いいニュースと、悪いニュースがある。どちらから聞きたい?」
誰もが嫌いな月曜日の朝、重苦しい雰囲気でゲンドウポーズを取っている深井先生がそんなことを言って来た。
どっちでもいいから、早く終わらせてくれ。
「土曜日に、合コンに行ったらさ、いい男がいてな。会話も弾むし、物腰も柔らかい。大企業に勤めているらしいし、ようやく私にもツキが回ってきたんだよ」
これはいいニュースの方か。深井先生も101連敗はしなかったようで良かった。
「これはいける!そう思った私は酒で酔わせてからの既成事実を作る作戦を立てた」
雲行きが怪しくなってきたな。
「酔わせてホテルに連れ込むところまでは完璧だった。このまま、ベッドtoチルドレンと洒落込もうと思った、その矢先。男が寝言でなんて言ったと思う?」
ゲンドウポーズの下に水溜まりができていた。
「『よしえ……』って呟いたんだ……」
うわ……まさかの既婚者or彼女持ちだったわけか。そして、深井先生は不倫相手にされたというわけだ。可愛そうにもほどがある。誰か貰ってやってほしい。
「しか~し!世界は私を見捨てていなかった!」
なんと。ここから大逆転ホームランがあるというのか。
「昨日、千寿パークでヤケ買いしに行ったらな。居たんだよ。『永世左王子』が」
俺のことだな……
男子たちは何がなんだかわかっていないが、『永世左王子』が俺だという話はどっかの元スーパーアイドルから聞いていた。
「だ、誰と一緒にいたんだろう」
「『直方通行』じゃないの?」
「いや、その日、『直方通行』はサッカーの試合だったはずだよ」
「え?じゃあ誰なの?」
「解釈違い……!」
俺って空気だと思っていたけど、女子が騒ぎ出すほど、人気者だったんだなぁ。嬉しいなぁ。
『直方通行』が誰やねんとか色々、気になったがこれ以上考えないようにしておく。
灰銀『『直方通行』は進条春樹くんのことやで?』
俺『ありがとう。マジで知りたくなかった』
LINEでスーパーアイドルが親切に教えてくれた。俺の『永世左王子』よりはいいかもしれない。
「ええい、静まれ!皆の気持ちはよくわかるが話が進まん」
じゃあ、こんなクソみたいな話はやめてくれ。100%不必要な話で帰りたくなってきた。
「一緒にいた相手、それは━━━『黄金卿』だ」
「『黄金卿』と!?」
「新たな可能性」
「解釈違い!左×直が最高のカップリング。左×黄は駄目!」
「で、でも3Pの可能性も……」
「だから、『直方通行』は部活だったんだって」
女子の皆さんが楽しそうで何よりです。俺もそっち側に行きたいよ。
灰銀『『黄金卿』とナニをしてたのさ!?』
俺『そもそも黄金卿って誰だよ』
灰銀『金城君のことだよ』
俺『聞いといてなんだけど、知りたくはなかったな』
灰銀『私ね、金城君の好きな人が瑪瑙君なら諦めるよ。そんなの勝てるわけないじゃん』
俺『そこは寝取りにこいよ』
俺だと諦めて、夢宮だと諦めないのは解せぬ。
「おっと、HRも終わりだ。名残惜しいが、続きは帰りのHRで、だ」
髪を靡かせながら、クールに退出する深井先生。最後に、一瞬だけ腐る瞳で俺を見てきた。
朝から無駄な時間を過ごしたよ。
━━━
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