第9話
金城を取り戻すと宣言した
別に灰銀のものであったわけではないけど……
「ネムレス君。君にも協力をしてもらいます」
「え?俺も?」
「当然でしょ?男性視点で金城君の趣味嗜好、並びに、性癖を暴きなさい。ついでに『悪女』の弱点についてもね」
ええ……すっげぇめんどい
灰銀がストーカーで捕まらないために付き添いで来ただけなのに、なぜこんな面倒な目に。後、性癖はいらんだろ。
「仕方ないなぁ。じゃあ交換条件でネムレス君の希望を叶えてあげよう。もちろん、可能な範囲でね」
俺が嫌そうな顔をしているのを察して交換条件を付けてきた。悪くないチョイスだが、なぜ頼む側が尊大な態度をとっているのだろう。
「そう言われても、灰銀さんにして欲しいことなんて全くないしなぁ……」
「……君はアレか?私の心を揺さぶる天才だね」
灰銀を見ると、笑顔でキレていた。
そんな意図は全くないんだが……
一応灰銀にやってほしいことを考えてみるが、見つからない。
「……なんでそんなに考えてるの?灰銀唯煌が君の夢を叶えてやるって言ってるんだぜ?なんかあるだろ?ってかあるだろ?」
お願いを受ける側なのに、責められている。これが世間でいう、逆パワハラってやつなのだろう。多分違う。
灰銀がパスを寄越せと要求しているが、やっぱり灰銀にして欲しいことは全くない。強いて言うなら、すぐに帰らせてほしいが、翌日に『灰銀唯煌、ストーカー容疑で逮捕!』って紙面に出たら、流石の俺も罪悪感がある。
となると、適度なお願いが良いのだが……
「あ」
「おっ、なんだよ。やっぱりあるんだね~。仕方ないなぁ、寛大な唯煌ちゃんが君の夢を叶えてあげるよ~?」
いちいち上から目線だなぁ。まぁいいけど。
「今日、うちに来れないか?」
「ええよええよ。仕方ない━━━ええええええ!?」
「うるせぇ!」
「グモ!?」
Tier4の口を塞ぐ。見た目はアレだが、声でバレてしまう可能性がある。辺りを見回すと、灰銀の奇行に一瞬驚いたくらいで、正体がバレたというようなことはなさそうだ。
「何すんだよ、ブラザー!」
「悪い、シスター。正体がバレないように気を使ったつもりなんだが」
「違う違う違う!NoN,NoN,NoN!」
指を動かしながら俺の言葉を否定する。何回言うねん。
「家にお誘いって馬鹿なのかな?ネムレス君が私のことを大大大好きなのはわかったけど、物事には順序ってものがあるの」
「そうか……」
琥珀が灰銀唯煌と会いたいって言ってたから、叶えてあげたかったが、無理だった。
すまん、不甲斐ないお兄ちゃんを許して。
「それなら、別のお願いを考えとくわ」
「お、おおう。ワイ、君という人間がまっこと分からんぜよ。押したり引いたり、一体何がしたいんや?」
俺は灰銀唯煌が分からない。キャラがブレブレぜよ。
「そんなことより、金城を追わなくていいの?」
「そうだった!ネムレス君の馬鹿野郎!」
何も悪いことしてねぇだろうが。
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