第二章 廃墟に逃げる

第3話 家

 午後6時45分。春樹は、テレビの音声を聞き流しながら宿題をやっていた。玄関では美絵子と竜吾のいつものやりとり——。しかし今日は、異様な緊張感が付き纏っている。


「子供はこういうの、敏感に察知するっていうよね……」


 春樹はクラスではできる方で、大人の話していることを聞くのが好きだった。


——小学2年生 メガネ 背の順でいつも中央にいるから、見られやすい緊張人。


 また緊張してしまうのか……?


 春樹は自分に問いかけた。


               *


——また、騙された。


 階段を上がり切ると、竜吾はため息をついた。今日というたった一日で二件騙されたのだ。自分の部屋でWINDOWSの電源ボタンを押す。残り3パーセント、充電が必要だった。


「何やってんだ、俺……」


 竜吾はまた深くため息をついた。背もたれにもたれかかって、俯きながら、ゆっくりと息を吸って、吐いた。


 空の色が、一段と濃くなってゆく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

そして僕らは廃墟に逃げる。〜We are Small diary〜 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画