Mistery Cat シリーズ

沼津平成

第1話 私、トクダネを逃す。

 時は令和。0点のテストより真っ白のオフィスを1組の男女を歩いていた。せっかくの大理石を白く塗った床は眩しすぎて逆に目が痛い。男女は、先輩の吉瀬雪子と、して、入社一年目の背の高い男だ。


             *


「吉瀬さん……大丈夫なんですか?」

「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だから」

 

 そう言いながら、私は笑顔で返した。年は三十二、数人だが、私を慕う後輩もいる。私の職業はテレビ・リポーター。天気予報枠だが、天気に詳しいわけでもなく、雨の中を濡れながらカンペを読むだけ。


「退屈だなぁ……」


 そうぼやきながら、私はデスクに座った。隣の席の同僚が、私に話しかけてくる。


「例のエス事件、進展があったらしいよ」


「そうなの!?」私はつい大声を出した。周囲の目が私に向けられる。


「すみません……」


 私は謝りながら、キーボードを叩き始める。ゲッ、ネットニュースにもう出ていた。せっかく、久しぶりの自分のネタ、それも……


——特ダネだったのに。


 私の画面を覗き込みながら、隣の席の同僚が私の言葉を続けた。

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