霊界の案内犬

出会って1ヶ月と少し。

その短い生涯を終えた子猫のトロちゃん。

旅立ったその日、実は不思議な出来事が起こっていました。


従業員は私を含めて三人です。

基本的には1日一人で働いて、週2日程度二人で働く日がある勤務形態になっていました。

従業員のAさんの他にBさんという女性も働いており、私たち三人の中で一番先輩で性格はとても明るくムードメーカーなタイプの人でした。


トロちゃんが亡くなったその日に勤務していたのはAさんでした。

そして退勤した後、夜の間に亡くなったのではないかと思われます。

翌日、出勤した私が確認した際には、既に冷たくなってなってしまっていましたから…

つまり、亡くなる前後、会えなかったのはBさんだけでした。


トロちゃんが亡くなって数日後、私とBさんと二人で勤務する機会がありました。

Bさんは朝出勤して来ると、神妙な面持ちで私に声を掛けてきました。

「あのさ、トロちゃん…私に会いに来たんだよ。」

「えぇ?どういうことですか?」


Bさんはトロちゃんが亡くなったその日、娘さんと旅行中でした。

日中は観光を楽しみ、夜はホテルに宿泊したそうです。

部屋には二台ベッドがあったので、娘さんと一台ずつ使用して23時には眠りに就きました。

すると夜中、Bさんは喉の渇きを感じて一度目を覚ましてしまったそうです。


あくる朝、目覚まし時計の音で目を覚ましたBさんは、娘さんのことも起こし、身支度を整えて朝ご飯を食べに行く準備を始めたそうです。

すると、まだ眠たそうな様子の娘さんがベッドから起きて来て、なぜか心配をされてしまったそうなのです。

「お母さん大丈夫?ちゃんと眠れたの?」

何の事だか分からないBさんは「何かあったのか」と聞き返しました。

「え?忘れたの?お母さん夜中起きてさ、“犬の声がする”っておかしなこと言ってたじゃん。」

Bさんはハッとしました。

昨夜の出来事を全て思い出したのです。


昨夜、寝ていたBさんは「ヴヴー、ヴー」という音によって目を覚ましました。

その音は犬や猫などの動物の唸り声に聞こえたそうです。

辺りを見回してみましたが、当然、部屋の中に動物の姿はありません。

一先ず枕元に置いておいたペットボトルの水を飲んでいると、娘さんも目を覚ましたようで「どうしたのか」と聞かれたため、「なんか犬の声がする」とだけ答えて再び横になり、眠りに就いたのでした。

娘さんにはその唸り声は聞こえていなかったそうです。


「あれはきっと、トロちゃんが怒って私のところに来たんだと思う。」

「どうしてBさんに怒ることがあるのですか?そんなことはないと思いますけど…」

「だって、唸ってたもん。きっと、私のお世話が雑だったから怒ってたんだよ。」

「いやいや、そんなことないですよ。ここにいるのはトロちゃんだけじゃないのだから、他の子に手がかかってお世話が多少雑になってしまうことだってありましたよ。仕方ないですよ。」

「えぇ~でも恨まれていたらどうしよう…」

「そんなことないです。大丈夫ですよ!」


私はこの話を聞いて、直感的に「それはトロちゃんだろうな」と思いました。

だけど、鳥肌が立つとか怖いとか、そのようなマイナスなイメージは感じられなかったため、恨んでいるということは無さそうだと思いました。

しかし、唸り声だった…という点は確かに気になるので、私は霊感があるという知り合いにこの話を聞いてもらうことにしたのでした。


そこで分かった結果は驚くもので、Bさんのもとへ行ったのは正確にはトロちゃんではない、とのことだったのです。

では、唸り声の正体はというと…

亡くなった動物をあの世まで案内したり、お世話をしたりする役目をもつ白い犬が、声の主だと言うのです。

その犬が、唯一トロちゃんに会うことがなかった、死に関わることのなかったBさんに亡くなったことを知らせに行ったのだということでした。

そして唸った理由というのが、その白い犬はBさんのことが苦手といいますか…「仕方がないから教えに行った」という、「渋々行ってあげたのだ」というニュアンスを感じるとのことでした。

因みに、なぜBさんが苦手なのかは分からないそうです(笑)



これが、トロちゃんについての後日談でした。

世の中には虫の知らせというものがありますが、霊界の案内犬が知らせに行くということもあるのだな…と興味深い事例を知ることができました。

苦手意識を持ちながらも教えに来てくれたのは仕事熱心で面倒見がよく、優しい犬だなぁと思います。

私はオカルトやスピリチュアルも好きなのですが、知れば知るほど面白い…興味深い世界だなと改めて感じたお話でした。

たくさんの“気付き”をくれたトロちゃんには感謝しかありません。

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