最後は誰も不幸にならない寝取らせプレイ~親友が俺の初恋の人を寝取ってほしいと頼んできた件
かくろう
第1章 度し難い性癖の親友 24話構成
第1話 親友よ……正気か?
「本当に、良いんだね?」
「はい……。覚悟は出来ています。
目の前に、初恋の人がいた。
ここはベッドの上。今、俺は焦がれてやまなかった初恋の人と睦み合う関係になろうとしている。
頬を赤らめ、瞳は潤み、プクッと厚みのあるピンク色の唇が半開きになっている彼女を見つめ、俺は興奮を必死に押さえ込んだ。
ちなみに彼女は俺の恋人ではない。
むしろ人の恋人。つまり俺は他人のパートナーと性交渉に及ぼうとしているのだ。
ではそれは浮気なのか?
裏切りなのか?
略奪なのか?
それは否であった。俺は彼女と付き合っている彼氏公認のもと、この関係を結んでいる。
「それじゃあ、カメラに向かって宣言しようか。今から、誰と、何を、どうするのか」
「はい」
この日のために様々な準備をしてきた俺。
決して心から歓迎していた状況ではなかったが、求めてやまなかった女性と了承の上で睦み合うことができるこの状況に感謝している。
彼女は意を決してベッドの前に設置されている三脚ビデオカメラに向かって宣言をした。
これより始まるのは"寝取らせ"。
俺は『寝取る側』。
彼女は『寝取られる』側。
俺は他人のものになってしまった初恋の人と、彼氏公認の寝取らせセックスに及ぼうとしていた。
本来なら
他人のパートナーを奪う行為。
絶対にやってはいけない事。
この世界でもっともやるべきではない愚かな行為。
だが、俺はそれを望まれている。
彼女が発する言葉が、それを物語っていた。
『高彦君……見てる? 約束通り、今から
悲しみと戸惑いを秘めた半笑いの彼女を、万感の思いで抱きしめる。
まずはここに至るまでの経緯を順番に話していくことにしよう。
◇◇◇◇◇◇
『頼む
意味は分かるのに、頭が理解を拒んでいるという現象を経験したことがあるだろうか?
俺は今、まさにそれを経験していた。
人生で言われることがないであろうトップ5に入る言葉を、よりにもよって親友から言われたのである。
しかも土下座もかくやと言う勢いで頭を下げながら、だ。
開いた口がふさがらないとはこのことだった。
「ごめん、もう一回言ってくれる?」
ここは行きつけのカラオケボックス。
安い。曲数豊富。持ち込みオーケー。
学生にとってこんなに有り難い遊戯施設は他にない。
現在俺は親友である高圓寺高彦と、その恋人である『
本来ここは歌を楽しむ遊戯施設であるが、俺たちはバックに流れるプロモーション映像の音声すらゼロにして真剣な表情で話していた。
「何度でも言おうッ。
そしてとうとう本当に土下座しやがった。
聞き間違いであって欲しいという俺の願いは脆くも崩れ去る事になる。
あまりにもあんまりであんまりな親友の言動に絶句するしかなかった。
「それはアレか? お前が同人活動に目覚めて、一緒に作家を目指そうぜ、とかそう言うのではなく?」
「そんな訳あるか!! 俺のッ、リアルの恋人をッ! お前に寝取って欲しいんだっ!」
もう頭を抱えるしかなかった。
いっそのこと冗談であって欲しかったと思う俺を誰が責められようか。
「OK落ち着け親友よ。寝言は寝て言えといいたいが、その目を見る限り、伊達や酔狂で言っているわけではないのだな?」
「こんなことを冗談で言えるかッ! 親友のお前にしか頼めないんだッ」
むしろ冗談ではないことが重大な問題である。
俺は目眩で倒れそうになった。
何を血迷えば恋人を奪われたいなどと思うのだろうか。
そういうのは創作物の中だけにしておけってんだ。
親友のまさかの性癖に頭痛がしてしまう。
「……」
俺は熱弁している大馬鹿野郎の隣で俯いている女性に目を向ける。
そうなのだ。いま問題なのは自分の性癖を大声で叫び散らかす
その当事者になろうとしている彼女の気持ちの方が何百倍も重要だ。
俺は沈黙を保っている彼女の方に向き直り、その気持ちを問うてみた。
「
「えっと……」
親友の隣に座るのは当の女性。
この高彦と現在お付き合いをしている女性だ。
彼女はうつむいて黙りこくり、非常に戸惑った様子で言いよどんでいる。
それはそうだろう。どこの世界にそんな狂気染みた提案を
だが彼女に問うたはずの質問の答えは、興奮冷めやらぬアホの声で遮られる。
「お前になら構わないと言っているぞっ!」
お前には聞いてねえよ。
だがその目つきは真剣そのものだ。まったく
鼻息荒く顔を迫ってくる野郎を押しのけ、改めて彼女に問うて見たのだが、興奮している高彦のせいで話が進まない。
頭は良いのに性癖の事となるとこんなバカ丸出しのヤツだったとは知らなかったぞ。
だが長年の付き合いで冗談か本気かの区別くらいは付く。
俺の親友である目の前の男が発言した内容は決して寝ぼけているわけでも、
真剣に自分の恋人を俺に寝取ってくれと
普通の感覚ではない。
読み物や映像の世界にそういう性癖が存在することは知っているが、実在の人間に、しかも親友という、ある意味でもっともそうあってほしくなかった存在にそれを好む人種がいるなどと誰が想像できるだろうか。
まあ、創作物の好みで、という条件なら百歩譲って良しとしよう。
しかし、彼は創作物の話をしているわけではない。
現実の話をしているのだ。
どんな理由であれ、自分の恋人を他人に奪って欲しいなどと、言うべきではないと俺は思う。
ましてや、本人の目の前でだ。
冗談でも親友の口から言って欲しくなかった。
「まあ待て。取りあえず順番に説明してくれないか」
改めて言うと、目の前で血迷ったことをほざく男はまごうこと無き俺の親友だ。
ノリは軽いし、成績は良いくせに少し頭はよろしくないが、基本的に良い奴なのである。
家が金持ちで、本人は明るく社交的。昔からかなりモテるのに、彼女が出来ても割と短期でフラれることが多いのが謎だったが、ここら辺に理由があったのかもしれない。
中学高校と同じ進学をし、大学まで同じになった昔なじみで親友の男だ。
俺が高校生時に付き合っていた彼女に振られた時も、慰めるためにデカい店を貸し切ってメシを奢ってくれたり盛大に励ましてくれたりもした。
本当に良い奴なのだ。後にも先にもこれほど仲が良くなった男友達はいなかった。
彼には付き合って1年ほどになる恋人がいる。俺が知っている限り、もっとも長い期間付き合っている彼女だ。
それが奴の隣に座っている女性、
華奢な体躯、大きな胸。くびれたウエスト。カモシカのような細い脚。
愛くるしい瞳。整った眉建ち。ぷっくりと色っぽい唇。
清楚でありながらどこか色気のある雰囲気。
女性らしさをこれでもかと表現した、美の女神と言っても過言ではない。
そして性格も良い。気遣いが出来るし、優しいし頭も良い。
少し引っ込み思案で流されやすいところもあるが、それも愛嬌として受け取れるくらい、魅力的な女性だった。
彼女もまた、俺達の昔なじみであり、俺が密かに憧れていた女性でもあった。
俺達の中学からの同級生で、俺の、【初恋の人】だ。
そう、彼女は俺の初恋の人なんだ。
そんな人を、こいつは寝取ってくれなんてほざきやがる。
絶句せずにいられようか?
よしんば彼女が進んで寝取られを経験してみたいというなら話は別だが、彼女の表情を見る限りとてもそんな風には見えなかった。
高彦はどういう経緯でそうなったのか、興奮冷めやらぬ状態で嬉々として語り始めた。
――――――――
度し難い性癖に翻弄される友人のために、東奔西走する主人公の奮闘記をお楽しみください。
※ザマァ展開はコンセプトではないので一切ありません。親友の幸せも主人公は願っています。
初日は午前中4話、夕方に更に3話投稿 、2日目も4話更新。
以降、最終回まで毎日投稿します。完結保証。
※24話構成の第1章までは、1日2話更新とします。
★★★レビュー、応援メッセージ、是非ともよろしくお願いします!
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