ゆかりの喫茶探訪 たまにはミレノ編
ミレノコーヒー。都内に500店舗を構える大手コーヒーチェーン店だ。(みふゆ調べ)
その代表メニューといえばなんといっても、映え映えなフレーバードリンクたち。いつぞや買ったあのミラクルミキサーケミストリーとかいうやつも、凄まじい色でSNSでは話題沸騰だった。レギュラー入りは果たせなかったみたいだけどね。
そんなミレノの愛好家は、ネットではミレニアンと呼ばれている。かくいうわたしもミレニアンで、しかもゴールドランク会員なのだ。ここまでたどり着くと特典がいっぱい。フレーバーへのちょっとしたトッピングが無料になるとか、14個買ったら1個無料なスタンプカードだとか。
この1個無料ってやつが、リア活部を結成してから達成しやすくなった。どういうことかと言うと、みんなの分をわたしが代表してお支払いすれば1度に複数個スタンプが貯まるわけだ。セコい? いいや、賢いでしょ?
で。ここからが本題だ。
ミレノは名前に『コーヒー』を冠している以上、フレーバーだけじゃなくって普通のコーヒーも売っているわけで。
「そういうわけで、今からミレノに行こう」
「ええっ、唐突ですね!? いつものことですけど」
放課後のお出かけ中、うさぎちゃんへそう声をかけて、わたしたちは自転車にまたがり最寄りのミレノへ向かった。流石は大手チェーンというだけあって、適当に街中をウロウロしていたらだいたい1軒くらいは見つかる。
「今日は趣向を変えてさ、お店の中でカフェしない?」
「なるほど。確かにいつもテイクアウトですからね」
入店してまずわたしたちを出迎えるのが、大型のタッチパネル。そこでメニューをポチポチ選ぶ。わたしともなればおおよそのメニューの場所は覚えちゃっている。いつもは最上段の『ビバレッジ』からの二段目『スペシャルフラッペ』へ進むけど、しっかり目視確認して『ビバレッジ』からの『オリジナルコーヒー』へ。コーヒーにも何種類か用意されているけれど、今日はいちばんシンプルなストレートコーヒーにした。
「うさぎちゃんは?」
「フラッペにしたいですが……ゆかりさんのオススメをお願いしてもいいですか?」
「任せて。トッピング盛り盛りにしちゃお」
ミレノといえばカスタマイズ。サイズにミルク量にトッピングに……加えれば加えるほど名前が長くなっていく。完成しました。抹茶フラッペミドルライトアイスインクリースドミルクプラスチョコレートチップビターグリーンティーパウダー。かつては口で唱えていたらしいけど、みんながこんなの唱えてたら人間どころかロボットでもパニックになりそうだ。注文を終えたら番号の書かれた小さい紙がパネル下からヴィーっと出てくる。商品名を目にしたうさぎちゃんは目が点になっていた。
しばらく待ったら受け渡しカウンター上のモニターに番号が出て、わたしたちは商品を受け取った。ここのカウンターにはどの店舗でも人間の店員さんが立っている。それがミレノのこだわりみたいだ。
空席状況は3割ほど。このいつでもお客さんが誰かいるって具合はやっぱり小さな喫茶店とは大違い。それでいてファミリーレストランやファストフード店みたいな賑やかさがないのがまた独特だ。お客さんの多くはスーツを着た社会人や、制服を着た学校帰りっぽい中高生。わたしたちも高校生ではあるけれど、ああやって制服のまま寄り道できるのはリアルスクールのうらやましいところ。
さて、それじゃわたしたちも着席してコーヒーをいただくとしよう。わたしの前には取っ手付きの白いカップに、シンプルなブラックコーヒー。うさぎちゃんの前にある白と緑のパラダイスとは対照的だ。
静かにカップを持ち上げて香りを確かめる。思えばミレノのコーヒーを意識して味わったことってないかもな。クセの少ない落ち着いた香りだ。
「「いただきます」」
そっとひと口。……うんうん、なるほど。
「安定感のある味だね」
「安定感、ですか?」
「そう。バランスが取れてるっていうか。苦みも酸味も尖らせてない、ちょうど真ん中ストレートってところ」
「なるほど……感想が上手ですね、ゆかりさん」
「そうかな? 色々コーヒー飲んでるおかげかもね。うさぎちゃんのは?」
「美味しいです。抹茶が盛りだくさんですね」
「それはよかった。ちょっともらっていい?」
いいですよ、とうさぎちゃんがストローをわたしに向ける。どういうわけがほっぺをちょっと赤くしているけれど。じゃあ失礼していただきます。……お口の中が抹茶祭り! トッピングで入れたビターグリーンティーパウダーがいい役割を果たしている。我ながらいいカスタマイズじゃん。
その後、わたしのコーヒーもうさぎちゃんにおすそわけして、さらに何度か交換こしてお互い完飲。対照的な味にしたおかげで適度に口の中がリセットできて、最後まで美味しく飲めたかも。
「なんかさ、このミレノのコーヒーって……ベンチマークみたいな味だな、って思った」
「ベンチマーク、ですか?」
「そう。お店で飲むコーヒーの『基準』っていうか。喫茶店のコーヒーはこれよりも美味しくあって欲しいなって」
だって、これよりも美味しくなかったら「こりゃあ『ミレノコーヒーで』よいですね」って話になっちゃうだろうから。
大手チェーンが勢力を拡大していけばしていくほど、世の喫茶店は隅に追いやられていってしまう。そう聞くとチェーン店が覇道を敷く暗黒大企業みたいに見えるけど、味を確かめてみると納得の安定感がある。
大手ってのは、そういう存在なのかもしれない。たまに飲んでみるのも悪くはないね。
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