第2話 地獄の始まり

とある夜。


仲のいい姉と二段ベッドで寝ていた夜。

まだ小学生。低学年のころだ。


‘ドカッ‘


大きな物音とすすり泣く声が聞こえてきた。

その音で起きた私と姉は音の聞こえる部屋へと向かった。

私は何かにおびえながら、姉にしがみついていた。


そこは父の部屋だった。

正確には元父である。


たばこやお酒が散乱する煙たい部屋で

椅子に座って怒鳴る父と、

床に正座をし、すすり泣く母がいた。


「ごめんなさい」


何が悪いのか。

母が何をしたのか。

何もしていないことを私と姉は承知していた。


父は酒癖の悪い人だった。

酔うと怒るかデレる人だった。


そして選択を迫られた。


「ママがいい?パパがいい?」


低学年の私たちにはまだあまり理解のできない質問であった。

しかし私と姉は母を選んだ。


年末。

一度実家に帰るといわれ、そのまま日本へ帰国した。


これが地獄の始まりである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る