和風漫画の終盤で死ぬ悪役に転生したので、理想の敵を演じます!
鬼怒藍落
第1話:推し転生とかふざけんな
俺の人生に傷とも言えるものを残したキャラがいた。
それは自分が子供の頃に偶然買った【大神戦乱夜神楽】という和風漫画に登場する悪役であるカグツチという男。
本名は別にあるのだが。その名を名乗り、どこまでも自分の信念を持って敵として主人公に立ち塞がり、最期まで敵として輝いた格好いい神への反逆者だった。
そう……
「…………連載追って十年間、推しが死んだんだが?」
ちょっと一旦待ってほしい。
そう言いたくなるほどに急……でもなくわかりきっていた事ではあるのだが、普通に目の前の現実を受け入れたくない。
この作品の主人公のことだし、結局救うだろとか思ってたのに普通に推しが格好良く死んだ。いやさ、納得できる結末でもあるし仲間になるのも違うよなーとか思ってたからいいんだけど……それはそうと推しが死んだ。
お膳立てはされたたし、ここまでの道筋もちゃんとしてたからこそのモヤモヤ。
なんというか、凄くつらい。十年こいつの活躍を追ってたからこそ、一人のファンとしてとても凄く。文句はない、カグツチという男にとってこれは満足した死だったから――でもさぁ、推しが死ぬのは苦しいじゃん!
「やばい普通に眠いのに……体が現実を受け付けてくれない」
今の時間は深夜零時五分頃。
……最速で漫画アプリに課金して、読み込んだ末のこの惨状にどうしても心が悲鳴を上げている。
ネタバレを踏まなかったことだけが救いだが、初めて経験する人生単位の推しの死を心が否定している。それでもなんとか乗り越えないとあのキャラに悪いとは思うのだが……わりぃ、やっぱつれぇわ。
「あ、でも――眠い」
今更だが俺の状況は、今日更新あるからと死ぬ気でこの時間まで起きていたというもの。だからなんだって言われたら答えにくいが、単純に凄く眠くて……ベッドの上で読んでいた俺の意識はそのまま落ちた。
―――――――――――
目を覚ませばそこは薄暗い部屋だった。
灯籠の灯りのみに照らされた冷たい部屋で、どう見ても俺の部屋ではないことが確かだった。ただ分かることは寒く冷たく寂しそうな部屋という事だけ。
なんだこれ? とそう思い、体を起こそうとしたけど……どうしてか頭が重くて体が持ち上がらない。
「あぁ?」
なんで? と言おうとしても出てくるのはそんな言葉。
高く言葉にすらならない物を出しながらも、俺はなんとか状況を理解するために腕を上げ、どう見ても俺のものじゃない紅い紋様が刻まれたとても小さな腕を見て。
「うぇ……あ?」
それに今気づいたけど、歯も生えてなくて……思わず抜かれたかと考えて。
気づけば俺は泣き出していた。
理解できない状況、何も分からない恐怖に支配されただただ泣いていると……この部屋に急いで誰かが降りてくるのが分かった。
「――ッ緋炎! 貴方、緋炎が生きてるわ!」
「だから言っただろう? 緋炎なら無事乗り越えると。しかし本当によかった」
抱きかかえられ、あやすように揺られると不思議と安心感が俺の中に生まれる。
そして、少し落ち着けた状況で……漸くだけど、この状況を理解し始めていた。
小さくて、白い腕。まともな言葉を一つも出せない口。一本もない歯……それに、俺の名前と一文字も掠ってない【緋炎】という名前。
それらの要素が合わさって、出した結論は転生。
だけど……あれだ。
でも、なんかこの部屋既視感あるなと思っていると目の前に……ナニカが現れた。
『……なんだこの赤子、なぜ意識があるのだ?』
俺の頭にはなんか偉そうな女性の声が響き……この真っ暗な部屋に蛇の瞳をした美少女が浮いていた。
急激に刺激される記憶。
見覚えのあるその少女は、俺の推しである【芥火緋炎】がカグツチと名乗っていた最もたる理由であり、その根源。
炎を思わせる紅い髪、蛇のような金眼に、この暗闇の中でさえ妖しく輝く紫黒の角……圧倒的な神威と呼べる様な何かを放つそれは、どこまでも不思議そうに俺を見て、ちょんちょんとつついてくる。
え、ちょっと待ってほしい。
そう心底思った。
だって、彼女は……原初の神であり、推しの力の源だ。
それで、それが見えるという事は……俺が転生したのは――。
『なんだ。意識があるなら話は早い、これからよろしく頼むぞ、我が契約者?』
推しキャラである【芥火緋炎】その人で、転生先は――あの鬼畜で有名な、世界だろう。えぇ、もっと別のがよかったぁとか思いながらも俺は、あまりの情報量に意識を落とした。
[あとがき]
カクヨムコン10、別の作品で参加していましたが思った千倍筆がのらず、書き切れる自信がなかったので非公開にし温めいた新作を放流します。
よければフォローと☆をお願いします。カクヨムコン獲りたい。
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