怒りと鬼火 1
それは、火桶に使う炭をお邸の裏の倉庫に取りに行っていたときのことだった。
檜垣の間に作られた通用口のあたりから、こんこんと音がして、わたしは炭を十能に移していた手を止めて顔を上げた。
「どちらさまでしょうか?」
千早様の元にはたまに来客があるけれど、裏の通用口からお客様が来たことはない。
けれど、無視をするわけにもいかないから、声をかけると、通用口の奥から「お野菜を持ってきました」と声が返って来た。
毎日のお食事に使う食材はいつも青葉様が仕入れてくださっているけれど、こうして運んでくる方もいるのだろうか。
わざわざお野菜を持って来てくださったのに、いつまでも通用口の外で待っていただくのも失礼だろう。
中に入っていただいて、それから青葉様を呼びに行こうと、わたしは通用口の閂を開ける。
「どうぞお入りください。今、青葉様を呼んでまいりますので」
通用口の外には、竹かごを背負った三人の男性がいた。
竹籠には大根や白菜などがたくさん詰まっている。
籠が重そうだったのですぐに青葉様を呼んで来ようとわたしが踵を返したときだった。
ばたばたと音がして、どうしたのだろうかと思えば、男性が背負っていた籠を降ろして、中のお野菜を地面に転がしているのが見えた。
……何をしているかしら?
なんでお野菜を、薄く雪が積もっているとはいえ地面上に転がすのだろうかと首をひねったわたしを、籠を降ろした三人の男性が取り囲む。
「あの……」
困惑して、わたしは声を上げようとしたのだけれど、その前に首の後ろに強い衝撃を感じた。
一瞬、目の前が真っ赤に染まる。
その場に崩れ落ちるのと意識が落ちるのは、同時だった――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます